大谷翔平の二刀流だからこその強み

 大谷選手が23年、武器にしていた球種がスイーパーだ。早い球速のまま横に大きく変化するスイーパーは魔球とも呼ばれ、バッターから多くの三振を奪った。この魔球もまた、大谷選手だからこそ体得できたようだ。

「彼の場合はバッターの立場から考えられるので、こういうボールは嫌だなとか、これは投げている人がまだ少ないとか、別角度から見られる有利さはあったでしょう。やっぱり、向かうべき次のステージを描くのが、うまいんだと思いますよ」

 毎年のように進化を続けている大谷選手。だからこそ熱心な野球ファンだけでなく、野球中継を見たこともなかったような一般の人たちを巻き込む人気を得られたのだろう。

「大谷選手がなにか新しいことを達成すると、結果的に見ているほうも勇気をもらえますよね。こんなことができるんだって、すごいポジティブな気持ちになるじゃないですか。もちろん、結果を残すためにやっていることだと思いますけど、本人も見てくれている人たちの笑顔というのは、進化を続けるモチベーションになっていると思いますよ」

 その大谷選手は23年12月9日に、北米の4大プロスポーツリーグ史上最高額となる10年総額7億ドル(大部分は後払い)の契約金で、ロサンゼルス・ドジャースに移籍した。名実ともに史上最高のプレーヤーとなった大谷選手の、24年はどうなるのだろうか?

大谷翔平+山本由伸でドジャース優勝は確実?

「ホームランは50本は超えてくるでしょうね。ロサンゼルス・エンゼルスにいた頃と比べると、ドジャースは打撃陣が強力なので、敬遠で歩かされることが減るでしょうし。ピッチャーと勝負できる場面が増えるとなると、ホームランも増えてくると思いますよ。

 ドジャースというチームにいることも有利に働くはずです。シーズンを通しての戦い方が上手ですから、ある程度、力を温存しながら、うまくサポートしてくれると思います。安定した成績を残せるでしょうね」

 シーズンオフの話題をかっさらった大谷選手。それだけに気になることもあるという。

「けっこうなプレッシャーがあると思いますよ。あれだけ注目されると、優勝して当然みたいになっていますからね」

 ドジャースは日本球界ナンバーワンピッチャーといわれる、オリックスの山本由伸投手(25)と契約合意に至ったと発表された。地元ではすでに優勝が決まったかのような雰囲気になっているという。

「これでチームがポストシーズンにいけないってなると、キツイですよね。大谷選手は自分よりチームの結果を優先するから、自分の成績がいいのにチームが勝てないって状況になると、本人も苦しいんじゃないでしょうか。すでにチームの勝ちを左右する選手として、見られていますから。そんな中で、大谷選手だけでなく、ドジャースがどんなチームになっていくのか、それも楽しみではありますね」

 山本投手も加わり、優勝の筆頭に躍り出たロサンゼルス・ドジャース。その中で、大谷選手がどのような進化を遂げるのか、注目だ。

■五十嵐亮太(いがらし りょうた)
1979年北海道生まれ。97年に敬愛学園高校からドラフト2位で東京ヤクルトスワローズに入団。2年目から一軍に定着し、リリーフ投手として活躍。04年には当時の日本人最速タイ記録となる、球速158キロを記録。最優秀救援投手に選ばれる。09年に海外FA権を行使し、MLBニューヨーク・メッツに入団。12年シーズンまでMLBでプレーし、13年に福岡ソフトバンクホークスに移籍。19年に古巣のヤクルトに戻り、20年に引退。現在は野球解説者として活躍している。