芸人・永野の異質さはよく知られるところだろう。「ラッセンが好き」で世に出て、テレビを席巻し、現在でもYouTube、ラジオなど多方面で活躍している。繰り出される強烈なフレーズ、モノマネの意味を本当に理解できる人はどれだけいるのだろうか。それでも笑ってしまう。
 かつて、朝の情報番組で俳優を本気でビンタして警察沙汰になり、テレビ局を出禁になったこともある。著書が2冊あり、音楽についての該博な知識と愛情、そして分析は驚くべき深さで読む人を圧倒する。「妻や子どもの写真をスマホの待ち受けにしてるやつといい仕事できないですよ」と語る永野の人生が変わった「THE CHANGE」とはなんなのかーー。

撮影/川しまゆうこ

 永野さん自身の人生が変わった、THE CHANGE。その時はいつだったのだろうか。

「THE CHANGEのお話もらったときに、ラッセンで出てきたことかな、って一瞬思ったんですけど、あれは、世間に近づけてうまくいっただけなんで。自分て、こんな人間なんです、もともと。
 ライブとかでもそうだったんですけど、ラッセンは明るくてああだから、それを見て元気になります、って言われて、すげえイヤだったんですよ。
 俺、お前たちが嫌いで、普通のことしたくねえからこの世界に飛び込んだんで、なんでベビーカーを押してるやつの生活の足しになってんだろう、と思って。犠牲論じゃないですけど、すげえヤだったんですよ。

 あー!!とか言ってるから、それを求めるし、みんな。

 今は賞レースする流れがあるから時代は変わってるんですけど、10年くらいまではうわーって芸人が出て、番組とか1周するじゃないですか。2周目からはマスコミの人が、来年どうするんですか、って聞いてきてましたね。
 如実に仕事もなくなって、うわーってなった時に、なんかもういつとかはたぶんないんですけど、なんとなく、別にいいや、とか思ってたんですよ。別にいいや、っていうか、これを言うと何も希望もないかもしれないですけど、現実逃避でやってるのもあるんですよ。社会から逸れたかったみたいな。
 ようするに、社会的不適合者がどう食っていくかじゃないんですけど。そうやって考えた時に、なんかすごい違和感はあったんです、“元気が出る”とか言われて。社会とリンクした感じが。一瞬嬉しかったんですけど、なんか違うなって思ったし。なんかありがちなことなんですけど、諦めたところからはじまったというか」