「人に優しくされたから、自分もしなきゃ」
もともと、喜怒哀楽が激しい性格で、腹が立つとめちゃくちゃ怒るし、面白くないって言われると烈火のごとくキレるんです。でも、反対に「面白いね」って言われると、とてもうれしいし、喜んじゃう。最近は映画を撮ったときに褒められることが多くなってきて、そうなると機嫌が良くなるんですよ。だから、昔の僕を知る人から、丸くなったとか優しくなったって言われると、それはちょっと嫌だなって。だって、性格的には何も変わっていないと思うんです。基本的には口も悪いし(笑)。
だけど、もし自分が優しくなったというのであれば、「人に優しくされたから、自分もしなきゃ」っていうことだと思います。それは心がけていることだから。
そんな感情の起伏が激しい僕の最新作『OUT』は、最初に撮った長編映画『ドロップ』の後日談とも言える話です。いわば、原点回帰だし、今のところ、僕の集大成になったと思っています。いろいろな感情が詰まってますから。今回、特にこだわったのはアクション・シーンでの“痛さ”。殴るシーンなんかは特に研究しました。たとえば、殴ったときに壁に穴が開くシーンも、実際のコンクリートの壁の上に壊れやすいボードを張って、さらにその上に薄くコンクリートを塗ったのを殴って壊す……という特殊効果で見せました。
そんなことを経て完成した本作は、自信作だし、やっぱり好きですね。自分が作るメシっておいしいじゃないですか、それと同じです(笑)。でも、自己満足だけじゃなくて、原作者やスタッフはもちろん、関わってくれた俳優が「この作品に出られて良かったな」って笑顔で思ってくれるのが、やっぱり監督冥利に尽きるんだと思います。
しながわ・ひろし
1972年生まれ、東京都出身。1995年、東京NSCの1期生で同期の庄司智春とともにお笑いコンビ「品川庄司」を結成。お笑い芸人、タレントとして「品川祐」名義で活動する一方で作家、映画監督のときは「品川ヒロシ」として活動。2008年に自身の自伝的小説を原作にした映画『ドロップ』で長編映画デビュー。主な映画監督作品に『漫才ギャング』(2011年)、『サンブンノイチ』(2014年)、『Zアイランド』(2015年)、『リスタート』(2021年)などがある。
映画『OUT』
暴走族「東京狛江愚連隊」の特攻隊長として“狛江の狂犬”と恐れられていた伝説の超不良・井口達也が少年院を出所。地元から遠く離れた西千葉の焼肉屋『三塁』で働き、新たな生活を送ることになるが、千葉の暴走族「斬人(キリヒト)」の副総長・安倍要との出会いが達也の人生を大きく変えることになる。
監督・脚本:品川ヒロシ
出演:倉悠貴、醍醐虎汰朗、与田祐希(乃木坂46)、水上恒司/渡辺満里奈、杉本哲太
配給:KADOKAWA
©2023『OUT』製作委員会