とにかく健康が大事
通常、現場で俳優さんを呼ぶときは役名なんですが、「男さん」というのも変だし、かといって本名で呼ぶと現実に引き戻してしまいますし。
「ちょっと」とか「あの」とかでごまかしてました(笑)。そんなわけで、この作品において唯一の失敗は、役名をつけなかったこと。台詞として出てこなくても、脚本上はつけておけばよかったですよ(笑)。
中学2年生で最初の映画を作ってから約50年。元旦に誕生日を迎えて64歳になります。先日、小津安二郎監督の映画を観ていたら、笠智衆さんが50数歳の役で「わしはもう終わりじゃ、終わりなんじゃよ」って言ってるんですね。そうか、この頃の50代はもう終わりの年齢なんだと、少しショックを受けました。
そんな僕が今感じているのは、とにかく健康が大事ということ。どんなにいい妄想が頭に浮かんだとしても、健康でなければ頭から取り出して映画にすることはできませんから。
とはいっても、いかにも体に悪そうなものは食べないとか、なるべく歩くとか、ストレッチをするとかその程度なんですけどね。
僕は60歳を過ぎたけど、まだ終わりじゃないぞ! と思いますが、最近はうっかりするとエロティックなことを考えるのを忘れてしまうので、危機感を感じています。だって、若い頃はエロティックなことを考えていない時間はなかったですからね(笑)。これではいかん、と、ときどき「よし、エロティックなことを考えよう!」と自分を鼓舞しながら日々を生きています。
つかもと・しんや
1960年1月1日生まれ。東京・渋谷生まれ。87年『電柱小僧の冒険』でPFFグランプリを受賞し、89年に『鉄男』で劇場映画デビュー。製作・監督・脚本・撮影・照明・美術・編集などすべてに関与して作り上げる作品は、海外でも高い評価を受け、数々の賞を受賞。また、俳優としては自身の作品以外にも数多く出演。監督作品に『ヒルコ/妖怪ハンター』『野火』『斬、』など、出演作に映画『シン・ゴジラ』『騙し絵の牙』『シン・仮面ライダー』など。
映画『ほかげ』
https://hokage-movie.com/
11月25日(土)渋谷ユーロスペースほか全国順次公開
出演:趣里、塚尾桜雅、河野宏紀、森山未來ほか
監督・脚本・撮影・編集・製作:塚本晋也
製作:怪獣シアター
配給:新日本映画社
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