観ている側を飽きさせないすごさ

 選手個々の能力、そして駆け引きや戦力、どちらもハイレベルなのがMLBなのだ。

「見ていて面白い。わかりやすいですよ、アメリカの野球は。大谷選手のスイーパーもすごいし。あとはアトランタ・ブレーブスのロナルド・アクーニャ・ジュニア選手(26)も、ベースが大きくなったとはいえ、シーズン70盗塁ですからね。すごいですよ」

 MLBは23年シーズンから、ホームベースを除くすべてのベースをタテ横約7.6センチずつ拡大した。選手の安全を図るためと、攻撃機会を増やすためだ。ほかにも、ピッチャーはランナーがいる場合は20秒以内、いない場合は15秒以内に投球しなければならないピッチクロック(投球時間制限)も導入した。

「ベースを大きくするとかピッチクロックとか、新しいものを取り入れてチャレンジしていくというのも、アメリカの野球の魅力だと思いますね。日本の場合はどうしても、アメリカが変えたからこちらも変えましょう、ということが多いので。日本が独自にやるのは難しい部分があると思いますけれど、観ている側を飽きさせない、面白さを継続して提供してくれるというのは、MLBの魅力でしょうね」

 エンターテインメントとしても最高の舞台であるMLB。そこに乗り込んでいく、山本投手の評価を聞いてみた。

微調整こそが大事

「10勝から15勝はしてもらいたいと思います。やっぱり、ニューヨーク・メッツの千賀滉大投手(30)の活躍は大きいですよ。MLB1年目で12勝ですから。それより高い評価をされていることを考えると、最低限でも10勝ということになるでしょうね」

 駆け引きが重要になってくるMLBの野球でも、山本投手は問題ないという。

「ストレートとフォークが得意なイメージがありますが、カーブもカットボールも、彼の場合はどの球種も一級品ですから、問題ないと思います。ただ、アメリカのボールに変わったことで、少し苦労するかもしれませんね。NPBのボールより、少し滑りやすいので。ただ、WBCでもアメリカと同じボールを使っていたので、それほど心配はいらないでしょう。

 開幕からすごい勝てる可能性もあれば、本来のボールがなかなかいかない可能性も考えられます。MLBに移籍していろいろな状況が変わった中で、微調整をどれだけ積み重ねて、山本投手が納得するものを作りあげられるか、ということが大事になってくると思いますね」

 持っているものが一級品なのは、今さら疑う余地はない。あとは微調整、というレベル。山本投手が投げ、大谷選手が打つ、そんな夢のようなシーンを、早くも見たいものだ。

■五十嵐亮太(いがらし りょうた)
1979年北海道生まれ。97年に敬愛学園高校からドラフト2位で東京ヤクルトスワローズに入団。2年目から一軍に定着し、リリーフ投手として活躍。04年には当時の日本人最速タイ記録となる、球速158キロを記録。最優秀救援投手に選ばれる。09年に海外FA権を行使し、MLBニューヨーク・メッツに入団。12年シーズンまでMLBでプレーし、13年に福岡ソフトバンクホークスに移籍。19年に古巣のヤクルトに戻り、20年に引退。現在は野球解説者として活躍している。