野球の知識が乏しい一般視聴者にも分かりやすい言葉で話してくれるためか、ワイドショーで姿を見かけることが多い五十嵐亮太さん(44)。その分かりやすさは、長いプロ生活で培われたものであることは間違いないだろう。NPBからMLBへ、そしてNPBと、23年にわたるキャリアの中で経験した「CHANGE」を聞いてみた。【第3回/全5回】

五十嵐亮太 撮影/有坂政晴

能力、駆け引きともにハイレベル

 大谷翔平選手(29)に続き、山本由伸投手(25)がロサンゼルス・ドジャースと12年総額3億2500万ドルで契約したことが報道された。日本球界のナンバーワンピッチャーとして成功が確実視されているが、MLBに移籍したものの、能力を発揮できずにメジャーの舞台を去った日本人選手も多い。

 世界最高峰とされるMLB。そこではどんな野球が繰り広げられているのか、メジャーの先輩である五十嵐さんに聞いてみた。

「今はなんでも数値化されていますよね。ピッチャーなら、この変化球はどのぐらいのスピンを、どの角度でかければいいのかとか。バッターなら、バットをどの角度でボールに当てれば遠くに飛ばせるのかとか。すべて数値化されて、再現できてしまう時代なんです。それもあって、個人の能力がどんどんあがっていますね。昔もMLBの選手はパワーがありましたがそれは今も変わっていなくて、球速も打球速度も、日本よりもアメリカのほうが上なんですよ」

 ただ、力と力のぶつかり合いだけなのかというと、そういうことでもないようだ。

「個々の能力があがった結果、たとえばピッチャーはバットのスイング軌道から外れるボールを、いかに投げるかということになってくるんです。大谷選手がスイーパー(横に大きく曲がる変化球)を使い始めたのも、そのためです。能力、技術が高まって、常に高度な駆け引きが行われているのが、MLBの野球なんです」