テニスファンだけでなく、多くのスポーツファンに衝撃を与えた加藤未唯選手(29)の全仏オープン女子ダブルスでの失格事件。しかし、さらに人々を驚かせたのは、その直後に出場した混合ダブルスで、加藤選手が優勝をはたしたことだろう。テニス4大大会での初優勝を成し遂げ、さらなる飛躍を目指す加藤選手に、これまでの自分を形作った「CHANGE」を聞いてみた。【第1回/全3回】

加藤美唯 撮影/北浦敦子

「居場所がなくなるんじゃないか」という恐怖

 取材時、記事用の写真撮影をテニスコートで行った。加藤未唯選手(29)はテニスウェアではなく、ふわっとしたかわいらしいセーターを着ていたが、コートに立っても不自然さはなく、見事にその場になじんでいた。生粋のテニスプレイヤーなのである。

 2023年、日本のテニス界で最も話題になったことといえば、加藤選手のボールパーソン事件だろう。全仏オープンの女子ダブルス3回戦で、加藤選手の返球がボールパーソンを直撃し、“失格”処分となった出来事だ。そのときのことについて聞くと、加藤選手は神妙な面持ちで話し始めた。

「一発で失格って、テニスではなかなかないことですし、テニス選手としてやってはいけないことだったので、反省しました。ボールガールの子には、すごく申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
 失格になったときはあらゆるところから批判されるんじゃないかと思いましたし、自分の居場所がなくなるんじゃないかという怖さがありました。ただ、関係者や仲のいい選手などが、思っていたよりたくさんの人達がサポートしてくれて、救われました」

 当時の映像を見れば、加藤選手が故意に当てたのではないことは明らか。それもあり、選手をはじめとする関係者、さらに多くのテニスファンから、失格処分は厳しすぎるという擁護の声が上がったのだ。