プロのテニスは戦績がすべて
しかし、成績を残しながらも、プロでやっていけるという自信は、まだ持っていなかったという。
「これでやっていけるって思ったのは、17年の全豪オープン女子ダブルスでベスト4に入ったこと、それと同じ年の全仏オープンのシングルスで予選を勝ちあがって、本戦に出られたことが大きいですね。自分のやっていることが間違っていなかったと思えたし、自信につながりました」
そのときに得た自信によって、プレーも変わったという。
「プロテニスは、どんなに頑張っても、勝てなければまったく評価してもらえない、戦績がすべてという世界なんです。だから努力して勝ったというときより、なにより戦績がでたときのほうが自信になりますね。逆に言うと、勝たないと自信につながらないんですよ。勝ったことで、自信を持ってショットを打てるようになったと思います」
勝利の積み重ね、選手としての自信を深めてきたこの10年。ではプレー以外、気持ちのうえで変わったことはあるのだろうか?
戦績が自信につながる。今のほうが勝ちたいと思う気持ちは強い
「プロでやっていくという思いは、なりたての頃より今のほうが強くなりました。前はテニス一本だけでやっていけるのかとか不安があったんですけど、今はそこから、これからこれでやっていくんだ、という確信に変わっています。しっかりとこれで生きていけると、思えていますね。勝ちたいという思いも、今のほうが強くなっていますし、テニスに関する思いは、今のほうが確実に強くなっています」
プロになってから10年、今が一番、テニスへの思いが強いという加藤選手。今はどのような気持ちで取り組んでいるのだろうか。
「以前はそんなに考えてプレーしていなかったんですけど、今はしっかり考えるようになりました。もちろん、考えることはそのときで変わるんですけど。意識の問題でも、より強く思うようになりました。年齢を重ねるにつれ、ちゃんとできているように思えるので、自分が前に進んでいっている感はありますね」
さらなる成長が期待できる加藤選手。24年のWTAのツアーはすでに始まり、夏には、パリオリンピックが控えている。自信あふれるプレーで、さらなる戦績を積み上げていくことに期待したい。
■加藤未唯(かとう・みゆ)
1994年京都生まれ。7歳でテニスを始め、2006年に全国小学生大会ベスト8。その後、立命館宇治中学校に進学し、11年に全豪オープン・ジュニアダブルスで準優勝の快挙を成し遂げる。13年にプロ転向。17年の全豪オープンでは、日本人ペアで史上初となるベスト4まで勝ち上がり、全仏オープンではシングルスで本戦入りする。23年の全仏オープン女子ダブルス3回戦で失格処分を受けるも、直後の混合ダブルスで優勝をはたした。24年WTA女子ダブルスランキングは26位(24年1月現在)。