「これはバービーに合格ってことなのかな」加入の瞬間

「音合わせをしてみたら、今度は“事務所で契約の話があるのではんこ持ってきて”って言われた(笑)。“これはバービーに合格ってことなのかな”って思った。じつはイマサもKONTA(コンタ/バービーのボーカリスト)も、バービーの前に一度デビューして失敗している。

 だから、ソニーのオーディションは背水の陣というか、“自分たちのやりたい音楽で売れる”っていう目標があった。バービーはデビューして以来、メンバーチェンジがないバンドなんですよ。それくらい本気だった」

 硬派な印象だった子供ばんどやARBと、都会的な男女の恋愛を歌っていたバービーとは毛色が違う気がするが、そこには意外な共通点があった。

「周りから見たら不思議かもしれないけれど、子供ばんど、ARB、バービーという流れは、俺の中では違和感はなかった。だって子供ばんどにいたベースって、バービーでも弾いていた安部王子だった。そういう意味では、俺が安部を追いかけている感じかな(笑)」

ENRIQUE 撮影/冨田望

 バービーへのベーシストとしての加入は、エンリケさん自身の音楽遍歴から考えると自然な流れだったという。

「最初はエンターテインメントとして、KISS(アメリカ出身のヘヴィメタルバンド)に興味を持った。その流れでディープ・パープル(イギリス出身のロックバンド)も聞き始めたり、中学の時には、セックス・ピストルズ(イギリス出身のパンクバンド)に衝撃を受けた。ポリス(イギリス出身のロックバンド)もすごく好きで、おそらくイギリス的なものに強く影響を受けているのだと思う。バービーの曲にもビートルズの要素がいっぱい入っている。だけど、イマサの天才さからなかなか気づかせないのだよね」

 バービーの代表曲でもある『負けるもんか』(1986年発売)は、ギターの印象的なイントロで始まる。

「『負けるもんか』のイントロ聴いていると気づかないけれど、ゆっくり弾くと案外ビートルズなのだよね。やっぱりブリティッシュの音楽が好きだから、それにすごく影響を受けているのだと思う。

 バービーのベースラインは、“こっちはどうかな”って話し合いながらアレンジしていた。イマサはビートルズだし、俺が大好きなKISSの要素もあれば、レッド・ツェッペリンとかも入っている(笑)。イマサ曰く、それはないらしいけどね。そういうブリティッシュロックに憧れたニューヨークの音楽が近いのですよ。KISSのジーン・シモンズ(*ボーカル・ベーシスト)も“俺たちはヘヴィメタル・ビートルズだ!”って言っていたからね」

 エンリケさんが講師を務めている音楽教室のスタジオで、エンリケさんはピアノや譜面台、機材に囲まれながら、まっすぐな視線で音楽について語ってくれた。その姿は、もうすぐ還暦とは思えないほど生き生きとしていた。

ENRIQUE(エンリケ)
1964年生まれ・コロンビア出身。1984年バービーボーイズのベーシストとしてデビュー。1992年にバービーボーイズ解散後は、江口洋介や永井真理子のバックバンドに参加。現在は再結成したバービーボーイズとしての活動をしながら、自身のバンドであるBICYCLEや、2023年に再加入したTHE STREET BEATSの活動も続けている。

撮影協力:アーティファクト・ミュージックスクール御茶ノ水本校

■ライブ情報
『蜂の四十年 俺のROCK自由祭』
還暦を迎えたエンリケ主催の公演。いまみちともたかや子も出演予定。
2月3日(土)クラブチッタ 開場16:00 開演17:00
2月9日(金)大阪・BIGCAT 開場17:00 開演18:00