最新作では「共演者との接触NG」

 そんな松村さんは、最新の出演作『劇場版 マーダー★ミステリー 探偵・班目瑞男の事件簿 鬼灯村伝説 呪いの血』で、初めての即興劇に臨む。「マーダーミステリー」とは、参加者が推理小説の登場人物となり、話し合いながら事件の解決を目指す体験型ゲームのこと。

「マーダーミステリーというものを知らなかったので、撮影前にスタッフさんを交えてやってみたんですけど、すごくリアルタイム感があって、とても楽しかったですね」

 撮影中は物語の性格上、共演者と接してはいけないというのがルールだった。そのため、各人には控室代わりに一人一台の自動車が用意されていた。

「共演されている犬養(貴丈)さんとは、このちょっと前にご一緒したことがあったので“お久しぶりです”って挨拶をしたら、スタッフの方がやってきて、“今しゃべらないで”って言われてしまいました」

 少し呆れたように、笑顔を浮かべながら回想してくれた松村さん。トイレに行くときすらも、顔を合わせるのがダメだったため、「行きたくなったら言ってください」とも言われたそうだ。

「すごく徹底していて不思議な空間でしたね」

 通常の映画とは違って台本はなく、事前に俳優陣に知らされているのは各々が演じるキャラクターの設定と行動の指示だけ。あとは即興劇(アドリブ)で進んでいき、個々の俳優の演技力が試された。

「決められたセリフがない分、いつ、どこで、自分が話し始めて良いかというタイミングがすごく難しいと思いました。自分だけが知っているという情報があって、それをどのタイミングでしゃべり出すか……ということも含めて、全部が自由だったんです。そういう意味では、ちょっとバラエティの感じに似ているのかなとも思いますね」。

 即興劇は初めてという松村さんだったが、その不思議な体験(感覚)は撮影終了まで続いた。

「映画って撮り進んでいけばいくほど、全貌が見えてきて、自分の役もつかめて行くんですが、今回はやればやるほど、これが作品になったときに、どういう作品になるかがまったく分からなくて、それがほんとに不思議でしたね」

 ラスト・ショットを撮り終え、監督からのカットが掛かったときも、その感覚は続いていたという。

「“え、これ、どうなるの?”って一人でメチャ戸惑っていました。“お疲れさま~。良かったね~”って手放しでお互いを労う感覚ではなかったですね」。

 完成した作品を見終わった瞬間、初めて「あ~良かったな~」って気持ちになれたという。この作品で松村さんは俳優として、また、ひとつの”新しい扉”を開いたのだ。

松村沙友理(まつむら・さゆり)
1992年8月27日、大阪府生まれ。B型。2011年にアイドルグループ「乃木坂46」の第一期生としてデビュー。2021年の卒業まで、アイドルとして活躍しながら、モデル、俳優としても活躍。近作としてはドラマ『推しが武道館行ってくれたら死ぬ』(テレビ朝日系)、『ショジョ恋』(フジテレビ系)や映画『ずっと独身でいるつもり?』、『劇場版 推しが武道館行ってくれたら死ぬ』など。現在、放映中のドラマ『極限夫婦』(関西テレビ系)の第一話では、主演を務めた。

■『劇場版 マーダー★ミステリー 探偵・班目瑞男の事件簿 鬼灯村伝説 呪いの血』
2月13日(金)より東京・新宿バルト9 ほか全国ロードショー
配給:アイエスフィールド
監督:光岡 麦
出演:劇団ひとり 剛力彩芽 木村了 犬養貴史 文音 北原里英 松村沙友理 堀田眞三 八嶋智人 高橋克典

『一夜のうちに3人の生贄の血を滴らせると死者が蘇る』という不気味な伝承が残る鬼灯村。その伝承を元に執り行われていた「三つ首祭り」の夜に村の長を務める一条寺家の当主が殺される。事件の真相に迫るべく、登場人物を演じるキャストのアドリブ推理で事件の真相に迫る新感覚ミステリームービー。
【公式HP】 https://madarame-misuo.com/
【公式X】 https://twitter.com/MadarameMisuo