「なんでこの仕事してるんだろうって、自分でも不思議です」と言って前田敦子は笑う。AKB48で絶対的なエースとして君臨し、2012年にグループを卒業してからは、俳優として活躍を続けている前田さん。その「変わらない本質」と「迎えたTHE CHANGE」とはーー。【第2回/全5回】

前田敦子 撮影/有坂政晴

 2024年2月公開の映画『一月の声に歓びを刻め』は、『幼な子われらに生まれ』『Red』の三島有紀子監督が自身のオリジナル脚本で描く人間ドラマ。監督自身が幼い頃に経験した事件をモチーフに、前田さんを含む3人の主人公たちの姿を見つめていく。前田さんは、過去のトラウマから恋人とも触れ合うことができなかった女性・れいこを演じた。

「すごく集中力の必要な現場でしたね」と口にする前田さんだが、それは、物語やキャラクターだけに起因することではなかった。難しいテーマを扱っていることもあり、もともとは三島監督の自主映画としてスタートした本作は、撮影日数がかなり限られていたのだ。

「1週間なかったと思います。監督もとても集中していました。ギュッとした密な撮影で、すごく鍛えられましたが、その中で監督が求めてくださることに答えられていない気がして、撮影終わりに毎日ホテルで悔し泣きしてました」

 前田さんが演じるれいこは、急死した元恋人の葬儀に駆け付けるために故郷を訪れ、その帰りに、レンタル彼氏をしているという男トト・モレッティ(坂東龍汰)と出会う。元恋人とも触れ合うことができなかったれいこは、自分を変えるためにトトとホテルで一夜を過ごす。

「缶詰め状態で撮影したんですけど、空きがあったら2時間くらい仮眠を取る、みたいな感じでした」