「なんでこの仕事してるんだろうって、自分でも不思議です」といって前田敦子は笑う。AKB48で絶対的なエースとして君臨し、2012年にグループを卒業してからは、俳優として活躍を続けてきた前田さん。その「変わらない本質」と「迎えたTHE CHANGE」とはーー。【第3回/全5回】

前田敦子 撮影/有坂政晴

「三島有紀子監督とは、数年前から“いつか一緒にやろうね”とお話していたんです」と明かす前田さん。

 現在公開中の主演作『一月の声に歓びを刻め』で、その約束は実現した。だが監督からのオファーを即決したわけではなかったという。

「映画って、なかなか形になりづらかったりするので、時間が経ってしまって。そんななかで、監督が自主映画で自分の経験をモチーフにした物語を撮ると聞きました。もちろん、飛び込んでいきたいと思いましたが、そのときの私に応えられるだろうかと思って、すごく葛藤したんです」

 出演を決めるまでに時間を要したという前田さん。本作は、三島監督自身が、幼い頃に受けた性暴力事件をモチーフにしている。前田さんが演じるのは、監督自身ではないがその気持ちがもっとも投影された役といえる非常に難しいキャラクター。テーマはもちろん、前田さんに迷いが生じたのには、そのときの自分自身の状況が関係していたという。

「子どもがまだ小さいこともあって、あまり重い作品を自分がやれる気がしなかったんです。それで、重い作品からちょっと遠のいていたんですよね。やりとげられなかったら、それこそ一番失礼ですから」