イラストやデザインのほか、文筆、写真、作詞・作曲など、多分野で活動するリリー・フランキー。最近では映画やドラマに多数出演し、個性派俳優としても高い評価を集めている。今60歳となった彼の「THE CHANGE」を聞く。【第1回/全2回】 

リリー・フランキー 撮影/山田智絵

 

 イラストレーターや文筆業であったり、俳優仕事であったり、ジャンルを問わずお仕事をいただいてきましたが、全部、“なんとなく”でここまできました。

 僕は結構、受動的というか、「やってみないか」と言われて始まっているんですよ。お芝居にしても、「俺でいいと言うのなら……」みたいな。そういう無責任さというか厚かましさで今に至る、と。

 当時は原稿の連載も、依頼が来たら断りませんでした。受けるだけ受けて、書けなかったら……落ちる。もちろん良くないんですが、それを続けていくと、もう「一人殺すも二人殺すも」みたいな感覚になるんですよ(笑)。本当に多いときは月に50本ぐらい連載していたんですけど、そうなると一日に3本書かなきゃ終わらない。

 でも不思議とね、そういうときのほうが原稿を落としてないんです。とは言いつつ、連載が1本しかないときにも落としていましたけど(笑)。つまり、忙しさとか媒体とか分け隔てなく、落とすときは落とす(笑)。そんな僕でも書籍が出ていたり、お芝居をやっているっていうのは、何かの巡り合わせがあったからなのでしょうね。

 あと、常にルーキーでいたいという気持ちがあります。新しいことをやっているうちは、自分もみずみずしい気持ちでいられますし。知らないことをやっているほうが楽しいですよね。でも、年齢を重ねるとなかなか新しいことを始めるということにためらう人は多いかもしれない。

 でも、新しいことを始めたとして、それまでやってきたこと……それがまったく別のことに反映されることもある。お芝居についてだと、映画の連載でたくさんの作品を観てきたというのは、当時、未経験の僕にすごく生かされていました。