イラストやデザインのほか、文筆、写真、作詞・作曲など、多分野で活動するリリー・フランキー。最近では映画やドラマに多数出演し、個性派俳優としても高い評価を集めている。今60歳となった彼の「THE CHANGE」を聞く。【第2回/全2回】 

リリー・フランキー 撮影/山田智絵

 

 直近で出演した日英合作映画『コットンテール』で、僕は主人公の兼三郎という役を演じさせていただきました。彼と共通するところがあるとしたら、兼三郎の場合は妻ですけど、連れ添いを失った際の、「ちゃんとしてあげられなかった」「忙しかったんだよ」という後悔。

 この映画は監督のパトリック・ディキンソンさんの私小説的なところも恐らくあって、監督と父親との関係が、僕の息子役の錦戸亮さんとの関係にも反映されているようにも感じました。

 面白いのは、スタッフさんが皆さんイギリスはじめヨーロッパの方々で、なぜか日本人を主人公にしてイギリスという国を描いていること。

 彼が一番影響を受けた映画監督が溝口健二さんだから、日本映画に対するリスペクトがあったのだと思います。作品で描かれる認知症の方々への介護の問題というのは、どの国の人にとっても他人事ではないというか、百年前からあったかもしれない普遍的な問題で、これからも続いていくもの。それを丁寧に描いた監督の物事の見方には、すごく共感を覚えました。

 イギリスのウィンダミアでも撮影をしました。なじみのない街で、終電をなくして兼三郎が自転車を盗んで滑走するシーンがあるんです。ただ、サマータイムの時期で夜10時くらいでも、空がまだ明るく、「終電をなくした」という状況が日本人には伝わりづらい。

 しかも、自転車のチェーン(鍵)を切るシーンがカットされているので、出し抜けに自転車を盗んで走っているようにしか見えない(笑)。夜になったら暗くなる日本という国に住んでいたらかなり分かりにくいでしょうね。