プライドなんて低くていいから、美意識を高く持ったほうがいい

 また、日本の映画監督からは出てこなさそうなセリフもありました。「もっと父親との時間がほしかった」と、息子が訴えながら泣くというシーンがあるのですが、そんなところもおもしろかった。

 逆に日本の若い子のリアルだと、たとえば、ウチの事務所のアルバイトの子はよく、「いや、でも私、プライド高いんで」みたいなこと言うんですよ。自分のプライドの高さが、美徳かのような口ぶりで。それが僕にはピンときませんでした。

「プライドが高い」って、昔なら悪口だったなぁ、と。今の子はそれをストレートに“誇り高い”という意味で使っている。見栄を張っているようにしか見えないんですが、僕はプライドなんて低くていいから、美意識を高く持ったほうがいいと思います。

 例え自分が攻撃されても、自分の中で美しいと思っているものだけは守る。それが美意識を持つということ。でも「プライドが高い」だと、自分が攻撃されることには、抵抗があるように見えてしまう。

 そういう意味で、僕は「プライドなんか低くていい。美意識を高く持て」と言ったんですが……(と言いながら、雑誌のグラビアページを眺めて)……あ、波多野結衣さんだ。“世界の波多野”、いやぁ、かわいいなぁ。

リリー・フランキー(りりー・ふらんきー)
イラストやデザインのほか、文筆、写真、作詞・作曲、俳優など、多分野で活動。初の長編小説『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』は2006年本屋大賞を受賞し220万部を超え、絵本『おでんくん』はアニメ化。俳優としては、映画『ぐるりのこと。』でブルーリボン賞新人賞を受賞。また、『凶悪』(13/監督:白石和彌)『そして父になる』(13/監督:是枝裕和)では、第37回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞(『そして父になる』)優秀助演男優賞(『凶悪』)ほか多数の映画賞を受賞。

映画『コットンテール』
主演・リリー・フランキー、共演・錦戸亮、木村多江高梨臨
イギリス・ウィンダミア湖を舞台に家族再生を描く、日英合作の感動作
2024年3月1日(金)
新宿ピカデリーほか全国公開