ハリウッドで一番驚いたのは撮影するカット数が多いこと

 撮影は2021年8月から翌年の4月まで約8か月。バンクーバーへ単身赴任でした。それは真田も、他のアメリカ人俳優もみんな同じ。日本だと、スターは現場に大勢の付き人を引き連れてくるけど、そういうのは一切なし。コンドミニアムで生活し、撮影がある日は車で迎えが来る。そして現場で出番を待つ間は、主要キャスト一人一人に用意されたトレーラーハウスで過ごすわけです。

 演技をするという点では日本もハリウッドも同じ。でも、撮影スタイルは違う。一番驚いたのは撮影するカット数が多いことかな。同じカットを引きで撮ったり、寄りで撮ったり、さらにアングルを変えて撮ったり。しかもリハーサルを終え、本番を撮り、監督が「グレイト! OK!」と言うから、“よし、終わった”と思っていると、「アゲイン!」。で、次も「ファンタスティック!」と言っているのに、「アゲイン!」。そんな感じで、ひとつのカットを20回くらい撮っていく。こうした苦労もあって、見事な時代劇に仕上がっています。

 実は、昨年、俺にとって初の外国映画『GREEN GRASS〜生まれかわる命〜』(チリ・日本合作)が公開されました。東日本大震災で命を落とした息子とその父親の2つの視点から描いたヒューマンドラマで、俺は主人公の父親役。この映画も編集に4年を費やしていて、映像が素晴らしい。ブラジルの映画祭で撮影賞を2つ獲ったそうです。

 劇中のセリフも少なく、俺の芝居も、セリフよりそのたたずまいや雰囲気で表現するようなところがあった。だから、例えばたばことその煙で父親の悲しみを表現しています。これまでたばこを吸い続けてきた経験が生きたわけだけど、そもそも役者というのは、たばこの吸い方ひとつで、観客の心を動かせるようでないといけないんです。

西岡徳馬(にしおか・とくま)
1946年10月5日生まれ。横浜市出身。’70~’79年に、劇団文学座に所属。退座後も、つかこうへい演出の舞台『幕末純情伝』、蜷川幸雄演出の『ハムレット』などで、その存在感を知らしめた。代表作として、映画『新・極道の妻たち』『椿三十郎』、ドラマ『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)、『過保護のカホコ』(日本テレビ系)、NHK大河ドラマ『風林火山』などがある。

ハリウッドが描く戦国ドラマ『SHOGUN 将軍』
『トップガン マーヴェリック』原案者が製作総指揮。真田広之がプロデュース/主演。
SHOGUNの座をかけた「関ヶ原の戦い」前夜の陰謀と策謀渦巻く戦国絵巻を描くスペクタクル・ドラマシリーズ。ディズニープラスの「スター」で独占配信中。