襟を正したくなる場所、彩の国さいたま芸術劇場

――とんとん拍子だったからこそ、早く外を見たくなったのでしょうか。

「あの劇団四季に入って2年半で主役まで上り詰めた。だったら外の世界でもいけるだろうと、本気で思っていたんです。でも売れないし、映像作品のオーディションには受からない。

 舞台ならいけるだろうと思っていたところに蜷川さんの演出(2012年『海辺のカフカ』)を受けて、まあボッコボコです。僕だけボッコボコ(笑)。何回泣いたことか。泣きながら一人で稽古場に残って必死で練習しても、全然ダメでした」

――ここで居残り練習をしてたんですね。

「四季でやっていたんだからだと思っていましたけど、男優がそんなにいなかったから抜擢してもらっていただけ、運が良かっただけで、別に自分の実力でもなんでもなかった。
もっとできる人はいっぱいいるし、自分より才能のある人もいくらでもいるんだと突きつけられました」

――初めての挫折でしょうか。

「僕だけじゃないんですけどね。藤原竜也さんとか、吉田鋼太郎さんも、蜷川さんのもとでもっと大変な苦労をしてきただろうし、いろんな思いを経験してきただろうと思います。でも、ここに来ると、緊張します。襟を正したくなると言うか」

柿澤勇人 撮影/冨田望