こんな60代は想像していなかった!
プライベートでは現在62歳。
「以前、先輩でもあるアナウンサーの田丸美寿々さんから“還暦からは収穫だ”って言われたことがあって、それがとても印象的だったんです。この時“私には収穫するモノが無いから今からでも頑張ろう、畑耕さなくちゃ”って思って、とにかくいろいろ頑張ってチャレンジしようと思ったのが50代。で、種を蒔き終わって還暦を迎えたら、60歳になって本当に本を書かせてもらえるなんて思っていませんでした。昔から書くことは好きだったんですけど、そんなチャンスには恵まれないし……と思っていたんです。でも、朗読教室をやったお陰で出すきっかけになったし、教室を機会にものすごくたくさんのつながりも出来て、こんな60代は想像していなかったです。そういう意味でも、とても実りのある60代を迎えているなと実感しています」
これからも更なる変化を寺田さん自身は目指している。
「昔はフリーという立場上、こういう仕事をやりたいなとか仕事が途絶えてしまったらどうしようって怖さを感じたり、そういうものをひっくるめて仕事の欲が強かったと思います。でも、今は仕事よりもやり甲斐とか自分の充実感とかっていうモノの方が大切に思えるようになったんです」
そこで、娘のゆりえさんと一緒に企画を立てて、脚本を書いて、会場を押さえて……というイベントを開催したりしている。アナウンサーの仕事は? と尋ねると
「もちろん、お話があればですけど、もう歳だから難しいかもしれませんよね(笑)。でも、いまってメディアがいっぱいあるから待っているだけじゃダメな時代なのかなとも思っているんです。自分から仕事を作り出す時代、世代に入っているのかなって。還暦になると、朝起きて“今日、やることないな~。何しよう?”って、『やること探しの日々』なんですね。そんなのつまらないじゃないですか。だったら、自分で企画して、仕事を編み出していって、人を巻き込んで、みんなで協働作業ができるチームを作っていくのが私の夢であり、いまやりたいことなんです」
セミナーと本との連動企画でYouTubeで『音読チャンネル』を配信していることもあってか、最近は街で声を掛けられることが増えてきた。
「メディアに出ているわけでもないのにね。モテ期かって? どうなんでしょうね」
そう語ってくれる寺田さんの笑顔は誰もを癒してくれる優しさに満ち溢れていた。
寺田理恵子(てらだ・りえこ)
1961年7月15日、東京都生まれ。聖心女子大学文学部卒業。A型。84年、フジテレビ入社。85~86年にバラエティ番組『オレたちひょうきん族』で2代目ひょうきんアナを務める。89年に結婚を期に退社、フリーとなる。98年に離婚。2000年に再婚し専業主婦として生活。しかし2012年に死別。2014年に復活。現在は朗読教室やアナウンススクールの講師を務めるかたわら、認知症サポーターとして朗読ボランティアや講演活動を行っている。
●作品情報
『日々の名作音読で人生の深みを知る』(さくら舎)
音読の力により人生の危機を乗り越え、再生させてきた著者が、音読の健康効果(自律神経のはたらきをよくし、ストレスを解消)にプラス、心の栄養にグッとシフトして音読作品をセレクト。古典から近代文学まで幅広い範囲から「生きるヒント」になるものを紹介。『四季を感じる毎朝音読』につづく音読本第3弾。