この一瞬に、エンターテインメントのすべてが詰まっている

 カメラの前で演技をし、観ている人の反応を肌で感じられない映像作品に対し、舞台は観客の笑い声、ため息までもすぐに感じられる。お芝居が終わり、カーテンコールで舞台から見る観客の顔、浴びる拍手と歓声――。それは、中川さんにとって感動的な体験だった。

「エンターテインメントの仕事って、お客様にどうやって面白いと思ってもらえるか、驚いてもらえるかだと思うんです。映像だと作ってからお客様に届くまでに時間がかかりますが、舞台ではそれをリアルタイムで感じることができた。この一瞬に、エンターテインメントのすべてが詰まっていると思いました。僕がやっている仕事は、お客様に楽しんでいただくためにあるんだ、と改めて実感しましたね」

中川大志 撮影/川しまゆうこ

 この舞台の作・演出を務めた倉持裕さんは、中川さんが出演していたNHKのコント番組『LIFE!~人生に捧げるコント~』の、脚本家のひとりでもある。妖怪どうしてやろうかなん、にらめっこ探偵、中川大志に転生した高校生……イケメン俳優とは思えない扮装と振り切ったコントに、お茶の間は驚きつつも爆笑した。

「『LIFE!』で得たものはすごく大きいです。コントって1本が短いので、この人物がどういうヤツか、出てきた瞬間にキャラクターを伝えなくてはならない。演技にしても、一瞬で表現しなくてはならない。難しいし、おもしろいです」

『LIFE!』では、特に「キャラクターの造形」を学んだという。

「キャラクターのビジュアルも含めて、出演者に委ねられている部分が多いんです。カツラをかぶるのか、ヒゲは描くのか、どんな衣装を着るのか。自分で考えるんですけど、内村(光良)さん、塚地(武雅)さんをはじめとする皆さんのキャラクター造形力というか、発想がすごく勉強になりました。だから芸人さんへのリスペクトはすごくありますね」

 舞台とコントを通して学んだエンターテインメントの力で、俳優・中川大志は進化し続ける――。

なかがわ・たいし
1998年6月14日生まれ。東京都出身。2011年、ドラマ『家政婦のミタ』(日本テレビ系)で一家の長男役を演じ、注目を集める。以来、数多くの映画、ドラマで活躍。2019年には映画『坂道のアポロン』『覚悟はいいかそこの女子。』で、第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。主な出演作品として、映画『四月は君の嘘』(2016年)、『砕け散るところを見せてあげる』(2021年)、NHK連続テレビ小説『なつぞら』、NHK大河ドラマ『真田丸』『鎌倉殿の13人』、TBS系火曜ドラマ『Eye Love You』などがある。

【作品紹介】
映画『碁盤斬り』
監督:白石和彌 脚本:加藤正人
出演:草彅剛、清原果耶、中川大志、奥野瑛太、音尾琢真/市村正親 
斎藤工小泉今日子/國村隼
配給:キノフィルムズ
5月17日(金)からTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
(C)2024「碁盤斬り」製作委員会