「本当におもしろかった」大先輩のエピソード
空き時間にはふたりで会話を交わすことも多く、大ベテランである國村さんのお話を聞けたことは、貴重な経験になったという。
「特に、海外での現場でのお仕事の話をたくさんお聞きしました。これまでご一緒された海外作品の監督のエピソードや、海外の俳優さん方の役へのアプローチの仕方などのお話が、本当におもしろくて、ずっと聞き入っていました」
『碁盤斬り』は、囲碁を巡る、誇り高い武士の生き様を描いた古典落語の名作がベースとなっている。中川さんは出演が決まってから落語を見たそうだが、どんなふうに2時間の映画にするのか想像がつかなかったと思い返す。
「落語というのは、江戸時代から庶民に親しまれてきたもので、題材も庶民が共感できるものが多いんですけど、現代人とは物事の捉え方が違う。たとえば、『碁盤斬り』では濡れ衣を着せられた格之進が、誇りをかけて……最愛の娘を犠牲にしてまで、仇討ちを決意するのですが、現代では考えられないですよね。現代だったら命のやりとりにまでは発展しないし、しちゃいけない。切腹が武士の誇りだと言われても、納得できないと思います」
しかし、長い間語り継がれてきた名作落語には、それぞれの時代を生きる人々が共感できることもたくさんある。
「僕が演じる弥吉は、つい口から出てしまった言葉によって物事がどんどん悪いほうへ向かってしまい、草彅さんが演じる格之進、國村さんが演じる源兵衛との関係がこじれていく。でも、いつの時代にも、どんな場所でもそういうことってあると思うんです」
長く愛されてきた作品には、愛されてきた理由がある。長く演じてきた俳優には、経験という財産がある。これから年齢を重ねて、「中川大志」という俳優がどんな風に成長していくのか楽しみだ。
なかがわ・たいし
1998年6月14日生まれ。東京都出身。2011年、ドラマ『家政婦のミタ』(日本テレビ系)で一家の長男役を演じ、注目を集める。以来、数多くの映画、ドラマで活躍。2019年には映画『坂道のアポロン』『覚悟はいいかそこの女子。』で、第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。主な出演作品として、映画『四月は君の嘘』(2016年)、『砕け散るところを見せてあげる』(2021年)、NHK連続テレビ小説『なつぞら』、NHK大河ドラマ『真田丸』『鎌倉殿の13人』、TBS系火曜ドラマ『Eye Love You』などがある。
【作品紹介】
映画『碁盤斬り』
監督:白石和彌 脚本:加藤正人
出演:草彅剛、清原果耶、中川大志、奥野瑛太、音尾琢真/市村正親
斎藤工、小泉今日子/國村隼
配給:キノフィルムズ
5月17日(金)からTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
(C)2024「碁盤斬り」製作委員会