人気ロックバンド、ユニコーンの川西幸一と、2022年に『塞王の楯』(集英社)で直木賞を受賞し、コメンテーターや書店経営者などの顔も持つ作家の今村翔吾。恒例となった2人のトークイベントに、デビュー作『屍人荘の殺人』(東京創元社)がいきなりの大ヒットを飛ばし、本格ミステリー界の寵児となった今村昌弘が加わった。レジェンド級のミュージシャンと人気作家2人によるトークバトルは、音楽業界と作家業界が共通に抱える問題点などにも及び、白熱したものになった。【第1回/全8回】
川西幸一(以下川西)「ユニコーンの川西幸一です」
今村昌弘(以下昌弘)「ミステリー作家の今村昌弘です」
今村翔吾(以下翔吾)「歴史のほうの今村、今村翔吾です。今回でこのイベントも3回目でしょ。川西さんと“ちょっとゲスト入れようか”って話をして、今回は川西さんと今村の部屋に今村を呼ぶということで」
昌弘「勢力としては今村が優勢です」
翔吾「二対一でね(笑)」
川西「昌弘さんは翔吾君が紹介してくれたんだよね」
翔吾「年齢は昌弘さんが1コ下なんですけど、芸人でいうところの同期でして」
昌弘「デビュー年が一緒なんです」
翔吾「歴史の今村翔吾、ミステリーの今村昌弘、純文学の今村夏子先生と、今、作家界には3人の今村がいるんですよ。川西さんと昌弘さんが会うのは今日が初めてですよね」
川西「僕は、ここ何年かは時代小説ばかり読んでいたんですけど、昌弘さんに会うので久しぶりにミステリーを読んだんです。中学生の頃はエラリー・クイーンとか、アガサ・クリスティとかのミステリーをよく読んでいたんだけど、久しぶりに本を開いて“見取り図”があるぞと(笑)。見取り図を一生懸命に覚えて読み始めるのは久しぶりでした」
昌弘「ありがとうございます。今回、声を掛けていただいて、自分はこういったところで話ができるのかなと思ったんですけどね。簡単にいうと、人殺しの犯人を見つけるというだけだから、そんな高尚な話はできないですし」
翔吾「僕はミステリーだけ読んでこなかったんです。そんな僕が初めて読んだミステリーが昌弘さんの本だったんですよ。昌弘さんのデビュー作『屍人荘の殺人』が……これ、どこまで言っていいのかわからないけど……ゾンビが出てくるのよね。“これがミステリーなんや!”って思って。それがきっかけで江戸川乱歩とか読み始めました」