Q:作中の登場人物で、実在する人をモデルにしたりイメージしたりした人はいますか?

 

昌弘「僕は特定の俳優さんは思い浮かべないほうですね」

翔吾「僕もどっちかっていうとそうかな。昌弘さんは自分の作品が映像化されたじゃないですか。主人公のイメージに神木隆之介さんは合ってた?」

昌弘「神木さんも浜辺さんも合ってましたね。中村倫也さんが演じた明智恭介という人物は、イメージと合い過ぎていたので、短編を書いたときは中村さんを頭の中でイメージしていました」

翔吾「僕は、俳優の青木崇高さんが好きなので、僕の作品が映像化されたら、何かの役でぜひ出てほしいと思いますね。あとは、ウチのオカンが玉山鉄二さんのことが死ぬほど好きで“あんた、タマテツに合う役を用意して書いてや~”っていつも言われてます(笑)」

 

Q:ミステリー小説を書かれる際、トリックなどはどうやって考えるのでしょうか? まさか本当に……?

 

昌弘「そんなこと、言える訳ないじゃないですか……。まあ、真面目に答えると、降ってはこないんです。この小説では、読者に最後にこういうことを感じてほしいとか、途中にこういう展開がほしいよねとか、必要な条件や環境を先に考えて、じゃあ、このときに、この人とこの人が関係する場面が必要だよね、って考えるんです。トリックが思い浮かばなくて筆が進まない。そうすると編集さんから電話が掛かってきたりして“じゃあ、お前がトリック考えろよ!”って小競り合いをしながら、ノートを取ったりメモを見返したりしつつ、アイデアが浮かぶのを待つって感じですね」

翔吾「編集者にトリックを一緒に考えようよとは言わないの?」

昌弘「言うんですけど、“それを思いついていたら私が今村昌弘になってます”って返されて終わります(笑)」

翔吾「僕はプロットなしで書き始めるから “壁打ち”って言って、編集者相手にアイデアをしゃべりながら構想をまとめることが多いかな。講談社の編集者はそういうのを相手するのが上手いんで、急いで書かないといけないときなんかは、講談社に行って壁打ちさせてもらいます」

 

Q:3人とも締め切りに追われるということがあるかと思いますが、実際に、編集者がどこまでも追いかけてきて、家の前でじっと待っている、なんてことがあるのでしょうか?

 

翔吾「今の時代はあんまり聞かないよね。昌弘さんは特に大切にされているから、出来上がるまで待ってもらってるでしょ」

昌弘「連載を持つっていうやり方をしている作家がそんなにいないっていうのもあるでしょうね。翔吾さんは連載も持っているけど、そんなに取り立てはこないでしょ」

翔吾「一回だけ、『じんかん』っていう作品のとき、ギリギリまでゲラを直したかったので、新幹線で編集者が原稿を取りに来ました。それには理由があって、『じんかん』を直木賞の候補に入れるために5月発売で設定してたんだけど、ちょうどコロナ禍の真っ最中で、印刷所がどこも閉まってたんです。開いている印刷所は順番待ちみたいになってて、そのときは大変だったみたい。あとは、家のドアノブに、差し入れのパンがぶら下がってたことがあった(笑)。“東京の美味しいパンです”ってメモがあって、ここまで来たらピンポンしろよって思ったけどね。まあ、締め切りっていうのは、設定された締め切りの後に“ホンマの締め切り”があって、その後に“ホンマのホンマ締め切り”があって“デッドライン”があるんです」

昌弘「今のは編集者に聞かれたら怒られる話ですね」

翔吾「でも、ホンマの締め切りって、肌感覚でわかるよね」

昌弘「雑誌の締め切りに遅れて、載らなかったら迷惑がかかる、だから取り立てに来るっていうのが基本的なところなんです。だから、自分が書かなくて自分の本が出ないっていうのは、そこまで迷惑はかけていないんですよ」

翔吾「僕らの世代って、締め切りは守らないといけない、宿題はやらないといけないっていう感覚があるんですけど、もっと若い世代って、すがすがしいくらいに“あ、無理ですー”って言ってくるんだよね。途中でやめられる勇気がスゴい」

昌弘「だから僕は締め切りを作らないんです。仕事を受けるときに、僕が書けたら本を出してくださいねっていうやり方にしてます」