「笑顔を見せることも封印していた」

 会話をしないだけではなく、笑顔を見せることも封印していたので、相当嫌な奴に見えただろうと思います。でも、松本さんがそうおっしゃったということは、映画をより良いものにするためには、僕の選択は間違っていなかったと思っています」

 驚くほどストイックな福士さんのアプローチに対し、松本さんも臆することなく完璧に応えることで、実際に2人のシーンはヒリヒリするほど生々しい。松本さんの“本当に嫌いだった”発言も、お互いの頑張りを称えあうために、彼女が示した一流の茶目っ気ではないだろうか。

 作品の中で福士さんが演じる濱中は、浅野忠信さんが演じる伊佐美という先輩刑事から、時に暴力的なプレッシャーをかけられ追い詰められていく。そのシーンはどれも演技とは思えないような緊張感があり、観ていてハラハラしてしまうのだが、実際に現場では浅野さんとどのようなコミュニケーションがあったのだろうか。

「浅野さんは普段とても優しいので、僕が頭を叩かれるシーンの撮影の前には“頭叩いちゃうけどごめんね”とおっしゃってくださいましたし、撮影が始まった瞬間にスイッチが入るような瞬間もないんです。

 だから現場ではすごくナチュラルに感じていたのですが、映像を通してみるとものすごく怖くて(笑)。それがとても不思議で、あらためてすごい役者さんだなと思いました。

福士蒼汰 撮影/三浦龍司