2024年3月31日、その男は筆を置いた。20年と9か月続いた国民的グループのバラエティ番組、スマスマこと『SMAP×SMAP』で放送作家をつとめ、オートーレース界に森且行が去りし後、メンバーから“6人目のSMAP”とまで言われた鈴木おさむ、その人である。
 バラエティ番組『めちゃイケ』『¥マネーの虎』『お願い!ランキング』『Qさま!!』、ドラマ『人にやさしく』『M 愛すべき人がいて』『離婚しない男』など数々の大ヒット番組や、国民的な海賊マンガ「ONE PIECE」の劇場版『ONE PIECE FILM Z』の脚本などを手掛けたことで知られる彼が、SMAPの小説『もう明日が待っている』と、テレビ界への遺言ともいえる『最後のテレビ論』(共に文藝春秋)を置き土産に、放送作家を辞めるという。
 なぜなのか。日本列島を笑いと感動で包み込んだ大ヒットメーカーの、断筆に至るまでの「チェンジ」と、放送作家を卒業後の「ビジョン」に迫った。(全5回 第4回)

撮影/小島愛子

サイバーエージェントに匹敵するような企業を作りたい

――放送作家を卒業された後、何をやられる予定でしょうか? 鈴木さんは、NHK大河と朝ドラの脚本は、書いておられませんが、もし、同じく大河ドラマで主演していない木村拓哉さんで書くとしたら、どんな脚本をお書きになりますか?

『最後のテレビ論』の中に、書きたいと思った大河ドラマと朝ドラの企画を書いたので、他には何もありません。やり残したことはないし、本に書いたことで、すべて終わりました。
 今後、僕は「スタートアップファクトリー」というファンド(投資家から出資を募り、その資金で投資や事業を行い、出資者に収益を還元する仕組み)をやるんですけど、これまでスマスマなどの番組を作ってきたように、今度は新しい人たちとサイバーエージェント(藤田晋氏がCEO務めるメディア事業、インターネット広告事業、ゲーム事業、投資育成事業を主とする日本の企業)に匹敵するような会社を作りたいです。
 これからの10年間、僕に勝負できる才能があるとするなら、アイディアと人脈を使って、新たにユニコーン企業(評価額が10億ドル以上の未上場のスタートアップ企業)を作って、世の中の景色を変えたいですね。