唯一無二すぎるキャラクターで、いちどその魅力に気づくと目が離せなくなってしまう芸人、安田大サーカスクロちゃん。近年は『水曜日のダウンタウン』(TBS系)などで芸人界屈指の「クズキャラ」として名を馳せている一方、人間らしい「喜怒哀楽まみれ」の姿に好感度もアップしている。そんな最低で最高な人間・クロちゃんの「THE CHANGE」とは。【第5回/全5回】

クロちゃん 撮影/有坂政晴

「あ、かわいい」 目の前のスキンヘッド+ヒゲヅラの男性に、思わず甘い声を漏らしてしまったのは、この日の撮影を担当した男性カメラマン。スキンヘッドの男性は、さらにかわいらしい“ニャンニャン”ポーズを繰り出し、レンズに向けてウインクする。カメラマンはなにかに気づいた顔をして、レンズから目を離す。

「普通にアイドルを撮っている気分になっちゃってました……」

 なぜか反省の面持ちを見せるカメラマンが撮影していたのは、クロちゃんである。そんなことは誰もが最初からわかっていたが、カメラマンから無意識に「かわいい」という言葉を引き出すパワーが、クロちゃんにはあるのだ。

ーークロちゃんは、もともとアイドル志望だったとか。

「そうなんですよ。松竹がアイドル部門を設立したと聞いて、オーディションで松田聖子さんの『渚のバルコニー』を歌って、少林寺拳法を披露したんです。それで受かりました」

 もともと松田聖子や小泉今日子に憧れていたが、本格的にアイドルを志したのは大学生のとき。社会福祉学部に在籍し、児童施設に実習に行った際、子どもたちの前で女性アイドルの歌を披露した。その特徴的な高い声は、女性アイドルソングとの相性が抜群だった。子どもたちは目を輝かせて喜んだ。その瞬間、「アイドルになりたい」と心を決めたという。

「中学くらいのとき、成長期でみんな声変わりしてきたのに、僕だけ低くならなかった。女性のようにめちゃくちゃ高くて。それで学生のころは、“気持ち悪い”、“男じゃない”とか、いろいろなことを言われてきました」

ーーそういう言葉を浴びせられて、めげなかったのでしょうか。

「みんなが言うように、僕も自分の声を“気持ち悪い”と弱点にしちゃっていたら、陰気になって、いまみたいな感じになっていないと思います。でも、僕はアニメやマンガがすごく好きだったんですよね。アニメ主題歌って女性歌手が歌うことが多いから、僕の声はアニメ主題歌が歌いやすくて。めちゃくちゃラッキーじゃん! と思ったんです。声が高すぎることは短所ではなく、長所になったんです」

ーー早々に、ポジティブに変換していたんですね。

「そうですね。あと、もしかしたら家族に、自分が悲しんでいる姿を見せたくなかったのかもしれないですね。親ってすぐに気づいちゃうから。家で悲しい感じを出したくなかったのかもしれない」