田中泯はダンサーである。その踊りは70年代より国際的に高い評価を受け、今なお世界各国からオファーが絶えない。また、田中泯は俳優である。映画『PERFECT DAYS』では踊るホームレスを演じ、カンヌ映画祭のレッドカーペットの上を歩いた。そして、田中泯は農業者である。山梨県に拠点を構え、泥だらけになって畑仕事に汗を流す。それら以外に執筆活動も行い、2024年3月にはエッセイ集『ミニシミテ』(講談社)を上梓した。そんな、アクティブに躍動を続ける79歳の「THE CHANGE」とはーー。【第4回/全4回】

田中泯  撮影/川しまゆうこ スタイリスト/九(Yolken) ヘアメイク/横山雷志郎(Yolken) ブランド名/ヨウジヤマモト プールオム(お問い合わせ先:ヨウジヤマモト プレスルーム)

 田中泯は、2024年5月の時点で、80歳を目前とした年齢だ。俗に言う“後期高齢者”である。だが、老いや衰えとは無縁の生活を続けている。自身のエッセイ『ミニシミテ』(講談社)のなかにこんな一文がある。

〈若い頃から齢を忘れて生きることを常としてきた。年相応が土台分からない〉

田中「生まれた年から計算すると79歳ということになるよな……とは思いますよ(笑)。ただ、年齢っていうのは、社会的な時間によって決められたものですよね。しかし、人間が生きる時間の流れ方というのは同じではない。個々に違うんだと思っています」

 現役であり続ける田中はまた、社会における老人のあり方にも懐疑的だ。

田中「僕は、なぜ一律に“老人”というもののイメージがこんなに決まっちゃったのかな? と疑問に思っています。今はいろいろなところで多様性という言葉が使われますが、老人こそ多様でしょう。いろいろな経験を重ねて、違った時間を通過してきた人たちがいっぱいいるじゃないですか。その多様性こそ、国にとって最大の資源のはずですよ。それをなぜ使わないだろうと思いますね」

 齢を忘れたメンタルには、それに伴った肉体が求められる。田中自身はいかにして健康で頑強な身体を維持しているのか?

田中「僕はね、公には『畑仕事で賄っています』と言っていますよ(笑)。まあ、それはウソではないのですが、それ以外に筋肉の力を自分で維持できるように(トレーニングを)やっています。まあ、身体の中身についてはそんなに大きな心配はしていない。一番の関心事は、“自分の筋肉がどうなっていくのか”その部分ですね」