シンガーソングライター、俳優の両方で活躍してきて良かったこと

 もともと中川さんはシンガーソングライターとしてデビューし、ミュージシャンとして活動していた。しかしデビューの翌年に出演した『モーツァルト!』での活躍により、ミュージカルへのオファーが次から次へと舞い込んだのだ。中川さんは続ける。

「ですからこの『ジャージー・ボーイズ』に出合って、“ミュージカルをやってきて良かった”と思ったのと同時に“音楽もやってきて良かった”と心の底から思いました。どちらもやってきたからこそこの作品に出会えたわけですし、おかげさまで素敵な賞までいただくこともできました」

 この作品で中川さんは、第24回読売演劇大賞・最優秀男優賞、並びに第42回菊田一夫演劇賞・演劇賞を受賞するという快挙を成し遂げた。さらに今作は熱狂的な人気を獲得し、3度に渡って再演されるなど、中川さんにとって近年の代表作となっている。

 そんな中川さんにとって、音楽家としての影響を与えたミュージシャンについて聞いてみると、ある大物歌手の名前があがった。

美空ひばりさんの楽曲には無意識ながら多大な影響を受けていると思いますね。物心ついたころには母親の影響で聞いていましたので。ひばりさんは涙をこぼしながらも声を詰まらせずに歌えるんですが、初めて観た時にはとてもビックリしました。

 あれって歌の中にお芝居の要素がしっかりと入っているということだと思うんですよね。“歌は語るように、セリフは歌うように”という言葉がありますが、ひばりさんはまさにそれを体現されているんだと思います」

 中川さんの圧倒的な歌唱力、そして“歌”と“お芝居”を見事に融合させる技術の高さには、昭和を代表する伝説的な歌手からの影響があるようだ。