鮮烈だった恭サマのアドリブ

「昔ね、日活で撮ってたんです。そこで本当に最初のほうのエピソードで、ふたりでラーメンを食べてたんですよ。そしたら本番で突然、恭サマが“タカ、ナルト、ちょうだい”と言ってきて。僕は“ええ!?”と(笑)。“あ、ありがとう”って、そう言うのが精一杯でした」

――具体的に覚えているんですね。

「鮮烈でしたからね。“タカ、ナルト、ちょうだい”って。突然(笑)」

――柴田さんは、それまでのお芝居でアドリブをやってきたわけではないんですよね?

柴田「してません。役者は台本をちゃんと言いなさいという時代でしたから。僕は舞台から出てきましたし。特に舞台ではアドリブなんて言っちゃいけないんです。決められたセリフをひと月、ふた月と稽古していく。あとは山田太一さんの作品とかね。山田さんの本は、セリフ自体にアドリブに近い部分があったりして、とてもステキな本だということもありますが、とてもアドリブを言うような世界ではありません。『あぶない刑事』の本はいろんな人が書いてくれましたが、もっと膨らむように、もっと楽しくなるようにと思ったんです」

――そうやって『あぶない刑事』の空気が生まれていったんですね。

柴田「あっちゃん(浅野温子)も(仲村)トオルくんもベンガルさんも、僕らだけじゃなくてね。それをちゃんと受け止めてくれた中条(静夫)さんが真ん中にいて、締めるときは締めていたから、ドタバタにならず、締まるときにはちゃんと締まる港署が出来上がったんだと思います」

※中条静夫・・・『あぶない刑事』シリーズにて神奈川県警察横浜港警察署の捜査課、近藤課長を演じた。

 舘さんと柴田さんだからこそ出来上がった『あぶない刑事』。作品との出会いを、「イコール恭サマとの出会い」と断言した舘さん。その言葉を受け止める柴田さんとの間には、8年ぶりの新作とは思えぬ、なんとも言えぬタカ&ユージ空気があった。

舘ひろし(たち・ひろし)
1950年3月31日生まれ、愛知県出身。76年に映画『暴力教室』で俳優デビューを飾る。ドラマ『西部警察』をきっかけに石原プロに入社する。36歳の時に『あぶない刑事』のタカ役でブレイク。18年には『終わった人』で第42回モントリオール世界映画祭最優秀男優賞を受賞した。近年の主な映画出演作に『アルキメデスの大戦』『ヤクザと家族 The Family』、土方歳三を演じて話題を呼んだ『ゴールデンカムイ』など。現在、ドラマ『ブルーモーメント』に出演中。

柴田恭兵(しばた・きょうへい)
1951年8月18日生まれ、静岡県出身。1975年に劇団「東京キッドブラザーズ」に入団。1986年、ユージを演じたドラマ『あぶない刑事』でブレイク。ドラマ『はみだし刑事情熱系』『ハゲタカ』など、さまざまな作品で演技派として認められている。主な出演映画に『野蛮人のように』『福沢諭吉』『集団左遷』『半落ち』『北のカナリアたち』など。今年2月から放送されたドラマ『舟を編む 〜私、辞書つくります〜』での演技も支持を集めた。

●作品情報
映画『帰ってきた あぶない刑事』
https://abu-deka.com/
監督:原廣利
脚本:大川俊道
出演:舘ひろし、柴田恭兵、浅野温子、仲村トオル土屋太鳳西野七瀬早乙女太一、ベンガル、長谷部香苗、杉本哲太岸谷五朗吉瀬美智子
(C)2024「帰ってきた あぶない刑事」製作委員会
配給:東映
5月24日(金)公開