どうしても東京へ行きたい!

 そう言われた奥田少年は反論できず、「そうだよな~。やっぱり、俺、長男だしな~」と思うしかなかった。それでも奥田少年は諦めることが出来ず、色々と策を弄した。そして一週間ぐらい経って、再度父親と向かい合った。

「これからは中央に出なければいけない。なぜならば、僕は25歳で市会議員に、35歳で県会議員に、そして45歳か50歳で国会議員になる。そのためには東京の大学に行って見聞を広めなければいけない。だから、頼むから東京の大学に行かせて下さいっ!」

 大声で演説口調で朗々と父親にそう進言した。

「もちろん、それは大嘘でね(笑)。ただ、俳優になりたいから行きたかっただけでね」

 父親も奥田少年の、その熱意に打たれた……ということではなかった。

「向こう(父親)も素直に認めるのではなく、変化球を返してきてね」

 上京の直前にひとつの条件を出してきた。

「先生(代議士)のところに相談したらうちに来りゃいいぞって言って下さったから、そこへ行って、先生の手伝いをしろって。“それって、その代議士先生の家に寝泊まりするってこと? ”って聞いたんです。そしたら親父は、そうでなかったら東京へは行かさんって言ってきて。それで、僕も渋々受け入れて、上京して先生の家に住むようになったんです」