吉本興業に所属するピン芸人、おばあちゃん。2019年4月にデビューした芸歴5年の“若手芸人”だ。昨年のM-1王者令和ロマンは東京NSCの1期先輩にあたる。若手といっても年齢は77歳。昭和、平成を懸命に生き抜き、令和の時代に新人としてデビューを果たした後期高齢者なのだ。家族の生活のため中学卒業後に就職、働きながら通信制高校、短大、4年制大学を卒業。38歳の時にはステージ4の乳がんが発覚し、生死を彷徨う。そんな彼女の波乱万丈すぎる人生の「THE CHANGE」に迫る。

おばあちゃん 撮影/有坂政晴

 

 吉本“最高齢若手”芸人・おばあちゃんこと沖原タツヨさんは、第二次世界大戦終戦の二年後である1947年に、東京の郊外で第二子の長女として生まれた。日本全体が貧しかった時代だ。

「家族みんなが食べるだけで精一杯。でもどこの家も同じようなものだから気にはなりませんでした」

 母が病気がちだったため、小学校3年になるころには家事はタツヨさんが切り回すようになった。男兄弟はやらなくてもいいのに。でも、そんなものだと思っていた。

 教師に都立高校への進学を勧められた時にも、女に学問はいらない、という理由で高校進学を許されなかった。心中は複雑だった。

「男女差がはっきりとあった時代でしたから。でも、私なんかはまだまだ序の口だと思います。同年代にはもっとご苦労された方がいっぱいいますよ。女は家のことをやっていればいい、旦那さんが帰ってきたら三つ指ついておかえりなさいをするのが仕事、そういうことを言われるわけですよ。でも、今とは時代が違うからどうしようもなかったし、嘆いても仕方なかった。ひとまず受け入れるしかありませんでした」