高校はもちろん、できれば大学にも行きたかった

 だが、多くの同年代とタツヨさんが少し違ったのは、進学の夢をずっとあきらめなかったことだ。中学を卒業すると、大手企業で事務員として働き始めた。給料は全額を親に渡し、そこから貰ういくばくかのお小遣いをせっせと貯金にまわした。

「ただただ上の学校へ行きたくって。学校に行ったところで、何ができるかは自分でもよくわかっていないけれど、高校はもちろん、できれば大学にも行きたかった。当時は行けるとも思ってはいませんでしたけどね。でも、どうしても行きたい。それを叶えるのに必要なのはやっぱりお金だよね、と思ったんです」

 昔から思ったことはやりとげないと気がすまない性格のタツヨさん。実は就職後、17歳の時に一度退職して職業訓練校に入っている。今で言うリスキリングのはしりだ。

「手に職をつけようと思いましてね。並行して通信制の高校にも入学したのですが、高校の方は途中で学費が払えなくなって断念しました」

 学ぶためにもお金が必要と理解し、ますます貯金に精を出すようになった。

「当時、女性の給料は安かったんです。けれども、少しずつでも貯めておけば、できるタイミングが来たときにお金を理由にあきらめないで済む。だから、少ない給料からどうお金をひねり出す方法を一生懸命考えました」

 結果、徹底した節約を実行した。

「洋服は一度買ったら手入れして長く着る。美容院にはめったに行かない。行ってもカットだけ。お化粧はしない。クリームを塗るぐらい」

 学費のために欲しい物を後回し。まるで苦学生の鑑のようだが……。

「おしゃれにまったく興味がなかったわけではないけれども、だからといって無理して節約していたわけでもないんです。どちらかというと自分に対してのケチを楽しんでました」