「俺の時代が来たな」

 そして1984年、飲みの席での出来事をきっかけに、「平泉成」に改名した。ちょうど所属事務所も移籍し「よーいスタートな気分」で以降の仕事に挑んだ。

平泉成 撮影/三浦龍司

 自身の右上に額縁を掲げるような仕草をする平泉さん。再現するのは、1989年1月7日。「小渕恵三官房長官(当時)が新元号『平成』を発表した瞬間をテレビで知ることとなりました」と続ける。

「真ん中に“泉”を入れたら“平泉成”じゃん。そのとき”俺の時代が来たな”と思った。それが、ひとつの大きなきっかけになりましたよね」

ーー芸名が変わると、マインドも“征”から“成”に変わるものでしょうか。

「ええ、穏やかになりましたね。仕事も穏やかで、良心的な役どころを意識してきましたね。意識的に穏やかになったような気がして、穏やかな役をたくさんやれたんじゃないかと思うんだけど、それがきっかけでしたね」

ーー平泉さんといえば、人情味あふれる穏やかな刑事、というイメージがあります。

「蹴り飛ばしたり殴ったり、そういう体力はもうなくなっていたしね。穏やかに諭す刑事ね、そういうの、テレビドラマでたくさんやりましたかね」

 まさに、名前が現在の平泉さんを「成した」のだ。不思議な出来事である一方、仕事が好転したことは、平泉さんの実力が成したといえよう。

ひらいずみ・せい
1944年6月2日生まれ、愛知県岡崎市出身。高校卒業後、ホテルに就職。大映フレッシュフェイスに応募、1964年第4期ニューフェイスに選ばれる。その後、大映作品に出演、1966年『酔いどれ博士』で映画デビュー。1971年の大映倒産とともに活動の場をテレビドラマに移行。1984年から現在の芸名“平泉成“に改名。以降、作中で存在感を放つバイプレイヤーとして名を馳せる。その特徴的な声と唯一無二の人間味が、多くの人にものまねされることになり、世代を超えて支持されている。

『明日を綴る写真館』
出演:平泉 成
   佐野晶哉(Aぇ! group)
   嘉島 陸 咲貴 田中洸希 吉田 玲 林田岬優
   佐藤浩市 吉瀬美智子 高橋克典 田中 健 美保 純 赤井英和
   黒木 瞳/市毛良枝
原作:あるた梨沙『明日を綴る写真館』(BRIDGE COMICS/KADOKAWA刊)
企画・監督・プロデュース:秋山 純
脚本:中井由梨子
企画協力:PPM
製作:ジュン・秋山クリエイティブ
配給:アスミック・エース
(C)2024「明日を綴る写真館」製作委員会©あるた梨沙/KADOKAWA
■公式サイト:https://ashita-shashinkan-movie.asmik-ace.co.jp/
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