今日のドラマや映画の世界で、極めて独特な光を放つ松本まりかさん。2024年は、4月期連続ドラマ『ミス・ターゲット』(朝日放送系)でGP帯(ゴールデン・プライム帯を指し、19時から23時の時間帯)で初主演を務め、映画『湖の女たち』では福士蒼汰さんとW主演、ドラマ『ブラック・ジャック』(テレ朝)では獅子面病の患者……と、さまざまなキャラを演じ、いま最も勢いのある俳優の一人である。そんな誰もが認める実績を持つ松本さんも、今日の活躍までには人に見せない長い苦労があった。そのあいだ、多くの葛藤や心の変化があったという。その先に見いだしたものは?【第3回/全3回】

松本まりか 撮影/三浦龍司

 現在放映中のドラマ『夫の家庭を壊すまで』(テレ東系)で、松本まりかさんは不倫した夫に復讐を企てる妻役を演じている。サレ妻・如月みのりを演じるうえで心掛けているポイントは──。

「ピュアな女性の内に、それまでまったく持ったことのない悪い心、復讐心が生まれてくる。みのりがここまで純粋でいられたのは根底には強い決意があったからだし、それが彼女を盲目的に動かしてしまう。悪に振り切ったときになくしちゃいけないのは、その正義感だと思うんです。正義感と純粋さ。ピュアだからこその反転した悪。ただの復讐だけでなく、みのりのそんな面も大切に演じていきたいです」

 そんな風に、役に、演じるということに真摯(しんし)に向き合う松本さん。今年2024年の初めに事務所を移籍したことに伴い、自身の中でも変化があった。

「すごく忙しいなかで、役や作品に向き合うことが十分にできなかった。それでもやり続けなきゃいけない。できない自分への罪深さを、日々感じていました。やっぱり表に出るって影響力があると思っていて、良い影響も悪い影響も与えてしまう存在。そこに責任感や使命感を感じていないといけないと思ったんです。
 これまではもらうばかりの、助けてもらうばかりの人生だったから、ラッキーなことに良い作品に恵まれて、少しは皆さんに知ってもらえるようになれて、これからは自分はどう生きなきゃいけないのかって改めて考えるようになりました。世の中の人に、自分の発言や行動、作品において良い影響を与えられる人になりたいなと思っていますし、そのためにまず自分の行動を見直そうと思いました」

松本まりか 撮影/三浦龍司