藤竜也さんの撮影現場での居方とは
ーー調和の良さをどんなところで感じましたか?
「この世界を作っていくのに、“こういう表現をしたら、物語にリアリティが生まれてくるな”というのがわかりますよね」
ーー息子役の森山さんとは初共演ですが、森山さんはどんな方ですか?
「いや、よく知りません。息子の“卓”として見ていましたから。べつに現場におしゃべりをしに来ているわけじゃないしね」
ーーたしかに……藤さんは普段から現場で話さないんですか?
「そうですね。話す人もいるけどね、“もうやめてくれよ”と言いたくなる。“うるせえな”と思います(笑)」
ーー(笑)仕事に集中したいから?
「そうだよね。遊びで撮影しているわけじゃないから。だって仕事中ですから。職場でね、おしゃべりしながら仕事をしていたら変でしょう?」
プロフェッショナルな一面を、フランクな口調で教えてくれる藤さん。最後に、ずっと気になっていたことを聞くと、柔らかくも重みのある言葉をくれたのだった。
ーー冒頭で“終わりがあるからいい”とおっしゃっていました。“終わり”について、意識的に考えたことはありますか?
「そんなに無理して考えなくても、必ず終わるんだから考えたってしょうがない。だからさ、いろんな捉え方があると思うよね。人によってね」
ふじ・たつや
1941年8月27日、中国・北京に生まれる。大学在学中に日活にスカウトされ俳優活動をスタート。1962年公開『望郷の海』で映画デビュー。70年代初頭まで「日活ニューアクション」で存在感を放つ。テレビドラマで2枚目俳優として人気を博していた1976年、大島渚監督作『愛のコリーダ』で主演を務め、海外にもその名を轟かせる。近年は連続テレビ小説『おかえりモネ』(NHK)や『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)など話題となったテレビドラマにも出演。7月12日公開映画『大いなる不在』で、第71回サン・セバスチャン国際映画祭のコンペティション部門でシルバー・シェル賞(最優秀俳優賞)を受賞した。
『大いなる不在』
卓(森山未來)は、ある日、小さい頃に自分と母を捨てた父(藤竜也)が警察に捕まったという連絡を受ける。
妻(真木よう子)と共に久々に九州の父の元を訪ねると、父は認知症で別人のようであり、父が再婚した義理の母(原日出子)は行方不明になっていた。卓は、父と義母の生活を調べ始めるが――。
監督:近浦啓
出演:森山未來 真木よう子 原日出子/藤竜也
7月12日より全国公開