中1から音大受験の準備、高3で声楽科受験を目指す

――中学・高校の音楽教諭になるために、音大受験をしたのですか?

「そうですね。最初は音大受験のために、週に1回、隣町までサックスのレッスンに行っていました。僕は中1から音大受験のための準備をしていたので、すごく伸びたんです。朝早く学校に行って音楽室のピアノで練習もしていました。

 でも高3になるときに、“音楽の先生になって吹奏楽を続けたいのに、このままだとサックスの演奏家になる道に進んでいる”って思った。周りにサックス専攻をやめて音楽教育科を受験したいって言ったら、 “こんなにサックスを頑張ってきたのに”って大反対をされましたね」

 中学時代からがむしゃらに頑張ってきたサックス。しかし、サックスという武器を捨ててでも、岡本さんが学びたいというものに出会った。

「音楽教育科を受験するとなると、サックスの実技試験が無くなるだけではなくて、声楽実技が試験に入ってくるんです。周りからも止められましたが、“もう決意したので”と言って、その日のうちにもう練習ができないように完全にサックスは収納しました。

 でもサックス自体は好きだったので、練習できないように、ダンボール箱に楽譜を全部入れて遠くに住む友達に送ってしまいました。そうしたら、サックスの先生が寝込んだらしいですね(笑)」

 サックスから音楽教育の道へと志望を変更したため、声楽の勉強を始めた。ここが男性ソプラノ歌手としての岡本さんの原点となった。

「初めて大学の先生に声楽レッスンを受けたら “君は声に個性があるから、声楽科を目指したらどうだ”って言われたんです。もう高校3年生だったので、進路を決めなければならない時期。

 音楽教育科では突出した音楽的才能はそこまで要求されないけれど、声楽科では僕の声が活かせるといわれた 」

 無事、国立音楽大学に入学。声楽を専門とした勉強を始めた。

「声楽科に入学してからは、周りはみんなオペラの勉強をしているから最初はついていくのに大変でした。念仏を唱えるみたいに(笑)、頑張ってイタリア語にカタカナでルビを振っていました。

 ドイツ語も分からないなか、アルノルト・シェーンベルク(※オーストリアの作曲家。1874年~1951年)の曲を歌わなければならなくて、ものすごく大変でした。右も左もわからないような中で、同級生たちは“誰々の演奏が素晴らしい”というような専門的な話をしている。必死になって頑張りました」

 音大に入学したことで、ソプラニスタとしての才能が開花していった。

「僕が入学した国立音大には、オペラが生まれたバロック時代に特化した研究科があった。先生方から、“バロック時代には男性ソプラノやアルトに向いている楽曲がある”とレパートリーについてご指南いただきました」

 声楽を専攻したことで、岡本さんの声質を生かした楽曲に出会うことができた。それがのちのプロへの道に繋がっていった。身振り手振りを添えながら、音大生時代のエピソードを語っていた岡本さんの姿を見ていると、才能がある人は必ずそれに適した場所へ自分で向かっていくのだと改めて思わされた。

おかもと・ともたか
1976年12月3日生。高知県出身。
国立音楽大学在学中から声楽家として活動。2003年11月CDデビュー。国内主要オーケストラのほか、モスクワ・フィルハーモニー交響楽団、イギリス室内管弦楽団、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団、プラハ室内管弦楽団など海外オーケストラとも共演。学校訪問コンサートなど精力的に活動している。

岡本知高CD デビュー20周年記念 Concerto del Sopranista 2023-2024

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