最初は“何も知らない”というコンプレックスがあった

 岡本さんの謙虚な姿勢は、自身のコンプレックスからきているという。

「音楽にしても、ファッションにしても最初は“何も知らない”というコンプレックスがあったので、周りの人たちが教えてくださることのありがたさを実感しています。アドバイスを取り入れながらも、自分の表現を通すことでそれが自分の色になっている。ちゃんとインプットを自分の中で消化して、表現に繋がるように気をつけています」

 岡本さんの魅力は声ではないですかと問いかけると、「その通りです。でもなぜ神様は高知の田舎に生まれた僕にソプラニスタの歌声を与えたのか。これは僕にとって永遠のテーマです」と続けた。

「ご兄弟やご家族も声が高いんですか?」と訊ねてみると、笑いながら「クラシックの声質で言えば、みんな高音です(笑)。でも群を抜いて高いのは僕ですけどね」と答えてくれた。

 彼にとって、天賦の才能を得たことに気づき、歌い始めたのが大きなチェンジだという。

「ステージに立つようになって、それまでは歌は勉強の場だったのがエンターテインメントに変わった。学生から、表現者になった。一度のステージの経験から、学ぶことが本当にたくさんある。これは毎日ロングランで同じ公演をやっていてもそうですね。生きたステージには、学ぶことが今もあります」