奇跡の歌声とも呼ばれるクラシック音楽歌手の岡本知高。世界的にも希有な「天性の男性ソプラノ歌手」として、その歌声はジャンルの垣根を超えて人々を魅了してきた。CDデビュー20周年を迎え、テレビ番組への出演やコンサートツアーと精力的に活動している岡本知高のチェンジとは?【第5回/全5回】

岡本知高 撮影/三浦龍司

 改めて、岡本さんに人生の中で大きな変化が訪れたときのことを訊ねてみると、意外な言葉が返ってきた。

「チェンジがないこと。チェンジして学んだことはたくさんあるけれども、良い部分はむやみにチェンジしようとは思わないので、チェンジがないことの大切さを大事にしています。

  あと、大人の言いなりで過ごしていた子ども時代に対して、自分で好きなことを発見したおかげで進みたい道に進むことができた。それからは、自分の道を自分で探したいという心構えに変わりました」

 CDデビュー20周年を記念したコンサートは、12月26日の『LINE CUBE SHIBUYA』でツアーファイナルを迎える。昨年から続いていたツアーを締めくくる東京公演に向けて、今の心情を聞いてみた。

「これまでの傾向としては、気張らずにいつも通りの感覚で、そのときに生まれてきた感情を伝えることができたら良いなって思っています。いつもと変わったことをしない方が、自分らしくいられるんです。衣装を着てメイクをすると、周りから見たら大変身したように見えるらしいですが、僕からしたらふだん通りの生活の中でスーパーに行くような感覚でステージに立っています。

 あまりオンとオフのスイッチの切り替えみたいなことはしていない。もちろん、一人でコンサートを2時間務めなければならないのは大変なことですが。気持ちとしては、スーパーで買い物をしていても、“はい、本番です”って声をかけられたらすぐに舞台に出られるようにしています」