「安定した職業があったのに、それを選ばないでここまで来たからね」
今年でデビュー30年になるm.c.A・T。ソロミュージシャンとしてのデビューを、最初は快く感じていなかった。
「m.c.A・Tのキャリアになると93年デビューだけれど、そのほかにも富樫明生という人物は、89年デビューなんです。『Bomb A Head!』でソロデビューが決まったときは、まさかデビューするとは思っていなかった。だってプロデューサー業で食べていけていたからね。
富樫はアルバムを2枚制作していたけれど、2枚目はディレクターの問題でお蔵入りになっていた。そこから映画のサントラを担当したことがきっかけで、m.c.A・Tとしてデビューすることになった。だからデビュー自体は嬉しかったけれど、人前に出るとは想像していなかったんでそこらへんの心の整理が大変だったって覚えていますね」
エイベックスという大手メジャーレコード会社でデビューしたA・Tさんの音楽性のルーツはかなり深い。自身のルーツには、ファンクだけではなくテクノポップも大きく関わっている。
「クラフトワーク(ドイツ出身のテクノポップグループ・1970年から活動)がシンセサイザーを使っているのをみて“おー! ”って驚いていたら、アフリカ・バンバータ(アメリカ出身のDJ・ヒップホップ黎明期である70年代から活動している)も出てきた。打ち込み音楽である808ステイト(イギリス出身のテクノバンド・1987年から活動)も聴くようになって、そこからヒップホップとテクノを融合させた音作りを始めましたね」
音楽活動を続けるにあたって、長い間、親との確執があった。それが受け入れてもらえるようになったのはデビュー後だった。
「親が音楽活動を認めてくれたのは、m.c.A・Tとして売れてからです。母は93年に他界しているんですけれど、その年がデビューだったからもうちょっと生きてくれていたら、その姿を見せられたのになっていう悔しさもあります。父は喜んでくれました。大学時代の軽音楽部の仲間たちは、みんな今は先生ですからね。
安定した職業があったのに、それを選ばないでここまで来たからね。俺は音楽教育を受けていないから基礎がないんですよ。それなのに、上京したのは完全に若気の至りですよね(笑)。こうやって音楽活動が続けられるのは、やっぱりみんなに助けられているからですよね。それはもう本当にありがたいことだって感じています」
強気な歌詞とは裏腹に、つねに周りへの感謝の言葉を忘れない。世間でのイメージとのギャップすら、彼の魅力の一つと言える。
えむしーえーてぃー
北海道札幌市出身。シンガー・ラッパー、作詞・作曲家、音楽プロデューサー。大学在学中からオリジナル曲でライヴを始め、数多くのコンテストで入賞。1993年、m.c.A・Tとしてavex traxより『Bomb A Head! 』でデビュー。以来、数々のヒット・チューンを生みだす。DAPUMP、AAA、屋良朝幸など多くのアーティストに楽曲を提供。近年も自身のライブや、アーティストへの楽曲提供、プロデュースなど精力的に活動している。
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