日本の撮影現場は足の引っ張り合い

 中国人や香港人っていつも仲がいいんです。ところが、日本人って外に出ると仲悪くなっちゃう。

 例えば、ジャッキー・チェンが長い下積みを経て、大スターになったときに、みんなで盛り上げましたよね。嫉妬したり、潰そうとしたりする人は誰一人いない。

 香港で監督が食事に連れてってくれて、お店の人に「今日は日本のスターを連れてきたよ」と言うと、すごい歓迎してくれるんですが、日本料理屋の日本人だけは「え、誰こいつ? 知らねえな。みんな知ってるか?」なんて言い出す。

 陰湿なイジメやハラスメントの噂を聞くのは、たいがい日本の撮影現場。足の引っ張り合いというのかな。良くないなって思います。

『帰って来たドラゴン』という作品が今度リバイバル上映されます。最初にこの映画が日本で公開されることになり、凱旋帰国したのが、1974年。この映画が日本で公開された年は、ブルース・リーの『燃えよドラゴン』公開の翌年で、カンフー映画ブームが起こっていました。だから新聞広告に、僕のことを「第2のブルース・リー」「和製ドラゴン」なんて書いてあって、「えっ、嘘だろ!?」ってビックリしましたね。

 この映画のことは鮮明に覚えています。というのも、僕は人生で120本くらい映画に出演させてもらったけど、この現場が一番きつかったんです。

倉田保昭(くらた・やすあき)
1946年3月21日、茨城県出身。T172cm。日本大学芸術学部演劇科卒業後、東映撮影所研究生を経て、66年にテレビドラマ『丸出ダメ夫』(日本テレビ系)でデビュー。71年に香港に渡り、同年『続・拳撃 悪客』で海外デビューを果たした。映画『帰って来たドラゴン』で日本凱旋し、『闘え!ドラゴン』(東京12チャンネル)、『Gメン‘75』などに出演後も、『七福星』(85年)、『フィスト・オブ・レジェンド』(94年)など国際的に活躍を続ける。

映画『帰って来たドラゴン』

映画『帰って来たドラゴン』
(2Kリマスター完全版)
倉田保昭、日本凱旋50周年記念。流浪の好漢・ドラゴン(ブルース・リャン)、格闘家ブラック・ジャガー(倉田)が秘宝の争奪戦を繰り広げる。同時上映:『夢物語』。配給:エデン
7月26日(金)より、東京・新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー