2014年に『恋歌』で第150回直木賞を受賞し、今や時代・歴史小説家として確固たる地位を築いている朝井まかてさん。だが、作家デビューを果たしたのは49歳と少々遅咲きだった。朝井さんの人生における「THE CHANGE」とは。さらに、新たな挑戦として、大阪の作家仲間と挑む「文士劇」旗揚げ公演についても話を伺った。【第3回/全3回】

朝井まかて 撮影/有坂政晴

 デビューから16年が経ち、文学賞の受賞歴を次々に重ねる朝井さん。そんな彼女が、作家仲間とともに新たな挑戦を始めている。それは、なんと文士劇! 文士(作家)とその仲間たちが集まって、芝居を打つというから驚きだ。

「東山彰良さん、澤田瞳子さんなど作家仲間数人と、『文士劇をやりたいね』って話していたんです。普通なら酒の肴にして終わりますけど、その噂を知った編集者が『それなら盛岡で行われている文士劇を観てみたらどうですか?』と。きっと本格的な文士劇を観たら、恐れ入って諦めるだろうと思ったんでしょうね(笑)。
 そこで盛岡文士劇を観に行ったところ、座長の高橋克彦さんが酒席に呼んでくださって『来年は君たちも出なさい』と。言い出しっぺは私だったので、昨年12月に文士劇にチョイ役で出演させていただきました。なんと、尼さんの役(笑)」

 こうした経験を経て、当初は小さな夢にすぎなかった文士劇が、徐々に具体化していく。話が一気に進んだきっかけは、先輩作家の黒川博行さんが参加したことだった。

「東山さん、澤田さんとの打ち合わせに、黒川御大をお招きしたんです。『時代ものは衣装代がかかるから無理やね』『なら、学園ものがいいかも』なんて話していたら、黒川御大が『学園もの? ほな東野圭吾の『放課後』やな』と。すぐに東野さんの快諾を得てくれました。あっという間に演目が決まり、会場も、黒川さんがご自身の伝手をたどってくれ、まずは仮押さえ。公演日と会場が決まらないことには、始まりませんから」

 かくして、大阪では実に66年ぶりとなる文士劇、その名も「なにげに文士劇2024」がこの秋上演される運びと相成った。出演者は16名。湊かなえさん、一穂ミチさん、門井慶喜さんら作家陣だけでなく、画家の黒川雅子さんや編集者、書店員も名を連ねている。

 しかも、高校を舞台にした『放課後』を演じるとあって、出演者はセーラー服(!?)もしくは学ラン姿(!!?)、体操服姿(!!!?)を披露。8月1日、公式サイトで新ビジュアルを公開するとともに、配役も発表された。

「体操服姿のビジュアルは、すでに公開しているのでこちらもぜひご覧ください(笑)。わずかな時間で16人の集合写真を撮るのは大変でしたけど、みんなようやってくれはってありがたかったです。本当に素晴らしいメンバーで、感動しましたね。誰ひとり面倒そうなそぶりは見せず、すでにチームワークができています」