西日本文士劇を新たな文化に

 8月1日からは、制作費を集めるためのクラウドファンディングもスタートした。

「芝居をするにはお金がかかります。正直に言えば、足りない資金は私たち実行委員が手弁当で賄うことも考えました。でも、そうすると2回目以降を続けることはできません。私としては、この文士劇を継続していきたい。そこで迷いはありましたが、資金をクラウドファンディングで募ることにしたんです。返礼品も、自分たちでちょっと面白いものを考えました。いえ、かなり面白い品々を取り揃えております!
 実を言えば、公的機関にも助成金を申し込みましたが、審議に何ヵ月もかかったうえに却下されました。実績のない1回目のチャレンジでは、認められないケースが多いそうです。フウフウ言いながら、お役所向けの書類を書いたのに。あんな硬い文章が苦手で小説書いてるのに(笑)。
 ええ話が舞い込んできたと思ったら、梯子を外されたりね。もう、池井戸潤さんのビジネス小説ばりに、いろいろなことが起きました。まだ起きるかも(笑)。
 周囲にはとても恵まれているんです。脚本演出、プロデューサーをはじめ、たくさんの人々のお力をたくさん借りて、ようやくここまできました。本当にみなさん、ご自身のギャラは度外視して助けてくださっています。
 でも私たち委員会は、まったくの素人。迷走するんですよねえ。とにかく、何も真っ直ぐ進んだことがない。頭を打ってばかり。でも、こんなにも作家たち自身が動いて手作りする文士劇は初めてかもしれません。それは、甲斐にもなっています」

 連載も抱えながらも力を尽くすのは、なにげに文士劇を西日本の文化にするため。

「1回こっきりじゃ文化になりません。でも、継続すれば必ずや文化になります。2回目以降は若い方々にバトンを渡すので、年に一度とは言わずとも文士劇を続けてほしいです。
 芝居に関しては素人ですが、私たちは文芸の世界で生きている人間です。芝居でしかでけへんことをみんなでやる。普段はひとりで監督から脚本、美術や衣装まで全部やっている作家たちが集まり、力を合わせて芝居を作る。身体表現に挑む。稽古はこれからですが、どうなるのか私も楽しみです。
 奇跡的な上演になるのか、ほんまにあかんのか(笑)。一生懸命やって、結果的に笑われたらそれはそれ。私たちも、晴れ晴れと笑い返せたらいいなと思います」

(つづく)

朝井まかて(あさい・まかて)
1959年、大阪府生まれ。甲南女子大学文学部卒。2008年、小説現代長編新人賞奨励賞を受賞してデビュー。13年、『恋歌』で本屋が選ぶ時代小説大賞、14年、同作で直木賞受賞。その後も『阿蘭陀西鶴』で織田作之助賞、『すかたん』で大阪ほんま本大賞、『眩』で中山義秀文学賞、『福袋』で舟橋聖一文学賞、『雲上雲下』で中央公論文芸賞、『悪玉伝』で司馬遼太郎賞、大阪の芸術文化に貢献した個人に贈られる大阪文化賞、『グッドバイ』で親鸞賞、『類』で芸術選奨文部科学大臣賞と柴田錬三郎賞を受賞。近著に、『ボタニカ』『朝星夜星』『秘密の花園』など。

(作品紹介)
なにげに文士劇2024 旗揚げ公演『放課後』
公演日程:2024年11月16日(土)開場 15:30 開演 16:00
会場:サンケイホールブリーゼ

大阪市北区梅田2-4-9 ブリーゼタワー7F
https://www.sankeihallbreeze.com
チケット価格:全席指定 一般席8,000円(税込) U25※5,000円(税込)
※観劇時25歳以下対象(チケットぴあのみ取り扱い・座席はお選びいただけません)
当日座席指定引換券・要身分証証提示
チケット発売日:2024年9月1日(日)正午~
チケットの購入:公式HP https://nanigeni-bunshigeki.com/

原作:東野圭吾『放課後』(講談社文庫)
脚本・演出:村角太洋
出演:黒川博行、朝井まかて、東山彰良、澤田瞳子、一穂ミチ、木下昌輝、黒川雅子、小林龍之、蝉谷めぐ実、高樹のぶ子、玉岡かおる、百々典孝、湊かなえ、矢野隆
主催・製作:なにげに文士劇2024実行委員会(委員長:黒川博行 委員:朝井まかて・東山彰良・澤田瞳子)

公式HP:https://nanigeni-bunshigeki.com/
クラウドファンディングに挑戦中(8月1日〜9月13日)
https://readyfor.jp/projects/nanigeni-bunshigeki2024