「本人の人格と要求されることが溶けあって…」

――寺内さんは、モノづくりに関して他にこだわっていることはありますか?
寺内:Qではリアルさだけではなく、ロマンを持たせる部分も大切にしています。テレビだと。台本通りに撮った後、そこから引き算して作りあげることが多い。Qの場合はもう少しロマンティックというか、台本通りの撮影より、なるべく現場で作り上げていくようにしています。
植田:現場にいるスタッフや出演者と一緒に作っていくんですね。
寺内:出演者から「こっちのほうがいい」という意見があれば、それを現場で共有します。
植田:そうなんですね。私はてっきり、寺内さんがゴールを決めて、その通りに撮っているんだと思っていました。何度か撮り直したら、まったく違うものになる可能性もあるということですよね。
寺内:天気なんかもそうですね。雨が降ったら、それなりのリアリティで撮ればいい。
植田:出演者の人もそうですよね。台詞がたどたどしくてもリアリティになる。
寺内:本当にそうなんです。たとえば植田さんの相方の小田さんなんか…。
植田:めっちゃ棒読みですね。
寺内:でも、子どもだと棒読みでもリアルさがあるんです。小田さんはちゃんと棒ができますよね。棒って一番難しいんですよ。小田さんがもっと器用な芝居をする人だったら、オダウエダはもっと違う芸人さんでしたよね。
植田:芸人は、そのあたりは得意かもしれません。本人の人格と、要求されることが溶けあって、予期してないもっと上のレベルに行くことってあります。
実際の人格と、台本とをうまく合わせて、現場で作り上げていく。このあたりの作り方は共通しているかもしれません。

「コントでよく言われるのは“靴でさめてしまう”なんですよ」と告白するオダウエダ植田紫帆さん。撮影/小島愛子

植田紫帆(うえだ しほ)
吉本興業所属のお笑い芸人。小田結希とお笑いコンビ「オダウエダ」を結成し、『第5回女芸人No.1決定戦 THE W』では王者に輝く。現在は『天才てれびくん』(NHK Eテレ)などにレギュラー出演中。

寺内康太郎(てらうち こうたろう)
映画監督、脚本家。Youtubeの人気チャンネル「フェイクドキュメンタリーQ」のメンバー。作品に『境界カメラ』シリーズ、『監死カメラ』シリーズ、『心霊マスターテープ』シリーズなど多数。「フェイクドキュメンタリーQ」から生まれた初の書籍『フェイクドキュメンタリーQ』(双葉社)は予約だけでアマゾン1位となり、現在、5万5000部の大ヒット中。気になる書籍の内容は、現在チャンネルで公開されている22本のうちで再生回数の多い6つの動画の後日談や、新作エピソード2編が収録。さらに、“恐怖音声”と“恐怖動画”を体験できる12の“恐怖注意QRコード”が付いた体験型のホラー本になっている。