「自分の世界が特別だとは思っていなかった」

 残された傑作群はもちろんのこと、唐さんには、その人物像にも豪快な逸話が多い。そうした話を、子ども時代はどう受け止めていたのだろう。

「今と違ってスマホやネットがあるわけじゃないので、自分の世界が特別だとは思っていなかったんです」と大鶴さん。だが、続くエピソードにはやはり驚かされる。

「オヤジが監督した映画で、主演の安藤昇さんと本物の拳銃を撃って捕まったんです。当時、僕は小学2年か3年生だったんですけど、母親と一緒に小田原警察に面会に行きました」

 唐さんは1976年、初監督映画『任侠外伝 玄界灘』の洋上ロケ撮影で、外国製の拳銃を使って実弾を発射。銃刀剣類所持等取締法違反などの罪で逮捕され、罰金15万円の判決を受けた。

大鶴義丹 撮影/冨田望