1990年代、ドラマ『逢いたい時にあなたはいない・・・』『悪魔のKISS』などで活躍し、名を広めた大鶴義丹。小説家や映画監督としての顔も持ち、現在は、主戦場を舞台に置く大鶴さんは、紅テントを象徴とする「状況劇場」で知られ、今年の5月に逝去したアングラ演劇の元祖・唐十郎を父に、アングラの女王と呼ばれ、ドラマ『3年B組金八先生』でも知られた李麗仙を母に持つ。そんな大鶴さんの語るTHE CHANGEとはーー。【第1回/全5回】

大鶴義丹 撮影/冨田望

「ちょっとやりすぎましたかね(笑)」

 暑い日の続く東京。時間より早く到着した大鶴さんに「今年は10本の舞台に立つそうですね」と話しかけると、言葉とは裏腹に、はにかんだ笑顔が返ってきた。今日もこのあと、芝居の稽古場に向かうという大鶴さん。10本のジャンルは、シェイクスピア劇『リア王2024』や、父・唐十郎さんの戯曲『ジャガーの眼』など多岐にわたる。

 唐さんはアングラ演劇の始祖と呼ばれたレジェンド。今年56歳になった大鶴さんは、唐さんの劇団「状況劇場」が新宿・花園神社境内に紅テントを建てた1967年の翌年、誕生した。

 子どものころ、自宅は稽古場でもあった。「状況劇場」は麿赤児、不破万作、根津甚八、小林薫らを輩出。クマさんこと篠原勝之や横尾忠則らがポスターを手掛けた。

「ずっと見てました。“年がら年中、大人がお祭り騒ぎみたいに何をやってるんだろう。面白そうだな”と。30分見て飽きたら見るのをやめて、戻ってくるとまだやってるから続きを見て。次の日も行くとやってる。Netflixじゃないけど、自分の好きなときに見て楽しむ感覚(笑)。そういうぜいたくな環境だったんですよね。オヤジの戯曲はすごく難しいですけど、子どもながらにこういう話だとか、今回よりも前回のほうが面白かったとか、分かっていた記憶があります」