両親が寺山修司氏との乱闘で現行犯逮捕

 このときは母の李麗仙さんと面会に行ったとのことだが、唐さんといえば、さかのぼる1969年1月、東京都の中止命令を無視してゲリラ公演した「新宿西口公演事件」も知られる。こちらは両親そろって現行犯逮捕。同年12月にも、唐さんは劇団「天井桟敷」の寺山修司氏らと乱闘騒ぎを起こして、現行犯逮捕された。

「そういった話は幼いながら耳に入ってましたよ。近所の友達に、“うちのパパとママ、警察に捕まったんだぜ。かっこいいだろう”とか言ってました。なんか子どもって、意外と受け入れるんですよね。そういう両親だって。それに時代が良かったんだと思います」

 たしかに今なら「不適切」どころでは済まなくなってくる。

「当時は応援する人も多かったですからね。今は全部がキレイでなきゃいけないけど、だからこそ風を読んでいく必要があると思います。そこでうちの70年代みたいな世界にいたら、やっぱりとんでもないことになるかなと。かっこよさの定義が違うので」

 一方で唐さんの残した作品は、いまも演じられ続け、愛され評価され続けている。

「“うまいラーメン”みたいなね。レシピをいじりまくるとまずくなっていく。そこは自分自身がオヤジの作品を演じるようになって、ちょっと見えてきました」

 2014年から父・唐さんの戯曲にも挑戦するようになった大鶴さんは、その本当の「かっこよさ」を、自ら培った実力によって伝えていく。

おおつる・ぎたん
 1968年4月24日生まれ、東京都出身。父は劇作家、演出家、俳優、芥川賞作家の唐十郎。母は舞台女優でNHK大河ドラマ『黄金の日日』やドラマ『3年B組金八先生』第4シリーズでも知られた李麗仙。大学在学中の88年、主演映画『首都高速トライアル』にて本格デビューした。90年に『スプラッシュ』で第14回すばる文学賞を受賞し小説家デビュー。94年『東京亜熱帯』(福武書店)や11年『その役、あて書き』(扶桑社)、22年『女優』(集英社)などを執筆。

 95年には『となりのボブ・マーリィ』で映画監督デビュー。企画・脚本・監督として09年『前橋ビジュアル系』や11年『キリン POINT OF NO RETURN!』など多くの作品を手掛ける。

 90年代には特に映像作品で活躍。映画『湾岸ミッドナイト』シリーズの主演を務め、ドラマ『逢いたい時にあなたはいない…』や『悪魔のKISS』などで人気を集めた。2000年台以降は舞台にも活躍の場を広げ、2014年から参加の劇団「新宿梁山泊」では父・唐十郎の戯曲に挑戦している。ここ数年、さらに舞台出演が増え、昨年6作品、今年は10作品に出演予定。最新舞台は『リア王2024』。

●作品情報
舞台『リア王2024』
作:ウィリアム・シェイクスピア
訳:小田島雄志(白水社刊)
上演台本・演出:横内正
出演:横内正、一色采子、大沢逸美、浜崎香帆、大鶴義丹、松村雄基、三浦浩一
主催・企画・製作:T.Y.プロモーション
2024年8月29日(木)~9月2日(月)全6回公演 三越劇場