1990年代、ドラマ『逢いたい時にあなたはいない・・・』『悪魔のKISS』などで活躍し、名を広めた大鶴義丹。小説家や映画監督としての顔も持ち、現在は、主戦場を舞台に置く大鶴さんは、紅テントを象徴とする「状況劇場」で知られ、今年の5月に逝去したアングラ演劇の元祖・唐十郎を父に、アングラの女王と呼ばれ、ドラマ『3年B組金八先生』でも知られた李麗仙を母に持つ。そんな大鶴さんの語るTHE CHANGEとはーー。【第5回/全5回】

大鶴義丹 撮影/冨田望

 現在、舞台俳優として邁進しているように映る大鶴さんだが、THE CHANGEの瞬間とは、どんなときだったのだろう。

「中年期に訪れる、遊びよりも仕事のほうが楽しくなってくるときですかね。楽しいし、一生懸命やらないと気が済まなくなるんです。人生、暇になるんで。暇っていっても、時間が余っているという物理的な意味とも違うんです。たとえば、若いときのようにいろんなことに心が動かされることが少なくなってくる。恋に身を焦がしたり、いろんなことに夢を見たり、走ったり。そういうのってだんだんなくなってくるんですよ。だから“心が暇”になってくるんですね」

――心が暇に。

「それで難しいこととか、大変なことをやりたがるんです」

――なるほど。年、10本の舞台ですからね。たしかに大変なことを実行してますね。

「ずっと元気でできるわけでもないですしね。オヤジがもしかしたら無念だったんじゃないかなと思うことがあるとするなら、最後の10何年間か、体を壊しちゃって芝居ができなかったことかな、と。僕らって健康寿命的なことはあまり考えない人種だと思うんです。よく今の奥さんとケンカになるんですけど、奥さんは、体を悪くしても100歳まで生きたいって言うんです。

 僕にはそれはないし、オヤジもそういうタイプではなかったはずで。だから60後半から仕事ができなくなっちゃったのは無念だったのかなって。自分にしたって、なんでもできる年数っていうのは限られていると思うんです。でもいま仕事する時間はたくさんある。だから中年おじさんは、意外と逆に忙しい」