中森明菜さんの「少女A」で注目を集め、以後、チェッカーズやラッツ&スターのヒット曲の数々、郷ひろみさんの「2億4千万の瞳-エキゾチック・ジャパン-」など、歴史に残る名曲を多数手がけている作詞家・売野雅勇さん。広告代理店でコピーライターとして働いていた青年が、なぜ、稀代の作詞家になれたのか。売野雅勇さんの「THE CHANGE」に迫る。【第2回/全5回】

売野雅勇 撮影/杉山慶伍

 生意気なガキ大将だった売野少年は、ある冬の日、天啓を受けたかのように恥を知り、思慮深い青年へと生まれ変わった。大学では、思いがけない出会いから、後の人生を決定づけていくことになる。

「大学生になった当初は、“遊ぶぞ!”って決めていましたね。実際、級友の男女数名で毎日のようにお洒落なカフェに行ったり東京巡りをしたり、気ままなキャンパスライフを謳歌していましたよ。でも、そんな日々にはすぐに飽きてしまいました。

 5月の連休後、エネルギーをきちんと燃焼させるべくアメリカンフットボール部に入部しました。僕は体当たりするより走って逃げる方が得意だから(笑)、もっぱらランニングバックなどのオフェンスでした。毎日、練習に明け暮れていたあるとき、1つ上の先輩から“売野にぴったりの職業がある、お前はコピーライターになれ”って突然言われたんですね。とても優秀で優しい尊敬できる先輩でしたから、その言葉がまるでサブリミナル効果みたいに頭に刷り込まれてしまっていた気がします。

 就職活動では、音楽ディレクターになろうと考えていましたし、内定をもらったも同然のレコード会社もあったのですが、先輩の言葉に導かれてとういうか、預言でも聞いたかのように、結局は広告会社に入社しコピーライターの道に進むことになったのです」