ありふれた言葉から衝撃を生み出すには?

 たとえば、『少女A』という言葉は、新聞や雑誌などでよく見る、ありふれたものです。多くの人は、それを歌詞に相応しい言葉、“歌詞のボキャブラリー”だと思いませんよね。それをあえて使うことで、衝突や衝撃、違和感が生まれるんです。誰もが見過ごしていたところから“これを使ったら面白いな”と発掘したことが、僕の功績なんじゃないかな。誰かが『え?何これ?』と驚きそうなものを意図的に歌詞に組み入れるのは、書いていてワクワクしますね。

 ただ、普通は使われない言葉を歌詞にすると、周りから“それはどうだろう。世間が受け入れないよ”と、反対意見も出るかもしれません。そうした考えを想定しながら、みんなが面白がってくれるぎりぎりのラインまで攻めるのがわりと好きだし、それが世に出たとき、たくさんの人が新鮮に感じてくれるのだと思います。

 こうした発想は、僕はビートルズから教わったものです。彼らの楽曲“Happiness Is a Warm Gun”のタイトルは、もともとは全米ライフル協会の広告のヘッドラインだったそうです。それを歌にしてしまうのが、平和主義者でシニカルなジョン・レノンのユーモアでもあるし、その方法論はいつか使ってみたいと思っていて、意識的に使用したのです」

売野雅勇 撮影/杉山慶伍