“降ってくる”タイプの作詞家ではない

 きっと、“この予定を入れてしまったせいで、締め切りに間に合わなくなったらどうしよう”と考える癖がついている気がします。それくらい歌詞を書くことは、僕にとって特別なことです。だって、“この曲で最高の歌詞が書けるかもしれない”と思えることは、ものすごい希望というか。ワクワクしながら書けるのは、作詞をする醍醐味かもしれませんね。

 ただ、そこそこの傑作が書けたと思っても、後から読み返すと“それほどでもないな”と感じることもよくあります。だからすぐに直します。推敲ですね。実は、これが僕はものすごく得意なんです。推敲には特別なインスピレーションより、集中と執着心と情熱が必要なんです。さっき言ったように、僕は“降ってくる”タイプの作詞家ではないから、彼らのように“歩いていたらたまたま言葉が下りてきた”とか、“喫茶店にいたら急に歌詞が降ってきた”ということはありえません。

 だから、僕は必死に机の前にしがみつくようにして書き続けるしかないんです。ひとり孤独に机の前に座ると、今も“いいものが書けるだろうか”というものすごいプレッシャーを感じますね」

売野雅勇 撮影/杉山慶伍