書いた歌詞がヒットしたときの特別な悦び

 重圧と背中合わせの日々だが、孤独な創作だからこそ得られる特別な感覚があるという。それは、創作を続けるモチベーションにもなっているようだ。

「それでも、長く書き続けていると、“今日は良いものが書けそうだな”という予感が分かるようになってきます。身体の中から、そうした確信めいたものが湧いてきて、特別な信号を送るのです。それに従って書いているときは、すごく気分がいいですね。飛行機の水平飛行みたいにふわふわと飛んでいるような、ある種のハイの状態になり、死すら恐れないような心境に至るんです。

 僕はたくさんの転機、THE CHANGEを経験しましたが、歌詞を書いて得られる“しびれるような感覚”は、今も昔も変わりません。さらに、手がけた作品がヒットすると、それが新たな報酬になるんです。報酬といっても金銭ではなく、脳内に感じる特別な悦びです。それはもう、ものすごい気持ちよさがあるからね。それで、この仕事を辞められないのかもしれませんね」

売野雅勇 撮影/杉山慶伍

(取材・文/キツカワユウコ)

うりの・まさお
 1951年2月22日生、栃木県出身。上智大学を卒業後、広告代理店に入社。コピーライター、ファッション誌の編集長などを務めたのち、1981年にシャネルズ(のちのラッツ&スター)の『星くずのダンス・ホール』で作詞家として活動を開始。翌年、中森明菜の『少女A』の作詞を担当、以来チェッカーズ、河合奈保子らに歌詞を提供、現在に至るまでその歌詞が多くの人に愛されている。